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鼠径部の痛みは股関節の前関節包の短縮が原因

ここでは関節包の短縮に伴う股関節痛の治療について解説していきますが、理解がしやすいように症例検討のような形で記載していきます。

患者は50代女性で主訴は鼠径部痛(股関節前面の痛み)。とくに痛みの原因となった誘因はなく発症する。

変形性股関節症の可能性が高いので画像検査(MRIや単純X線写真)を撮影したがとくに異常は見当たらない。

股関節周囲の筋肉を触診しても攣縮や圧痛はなく、皮膚の状態も問題なし。痛みは股関節を外旋した際に鼠径部痛があるのみ。

これだけの情報から痛みの原因はどこにあるのかを考えるかというと、画像検査でも写らず、触診が困難な部位である関節包を疑います。

他にも可能性としては靭帯が考えられますが、股関節の靭帯は非常に強靭なうえ、痛みの誘因もないことから除外しても大丈夫かと考えられます。

次に関節包のどの部分に異常があるのかを考えた場合、外旋時痛に骨頭がどの方向に移動するかをイメージすることが必要です。

股関節の場合は外旋時に骨頭は前方に移動し、さらに伸展時と内転時にも骨頭が前方に移動するような動きをとります。

そのため、股関節の前方に位置する前関節包に短縮があるのではないかと推察され、関節包内の動きも悪くなっている可能性が考えられます。

その状態が続くとスタートペイン(動き出し始めの痛み)が出現し、いずれは変形性股関節症に発展していきます。

それを防ぐためにも早期のアプローチが必要ですが、まずはどうして関節包が短縮したのかについて経過を尋ねてみることが大切です。

今回の症例では、半年ほど前に股関節の痛みが1度あり、そのときは病院には行かずに2〜3ヶ月ほどで痛みは寛解していました。

そこからまた3ヶ月ほどして痛みが再発したため、どこか悪いのではないかと気になって今回の来院へと至っています。

仕事では身体をねじるような動きがあり、その時に股関節が外旋することで痛みが起こることが一番つらいとのことです。

これらの情報から推察すると、股関節の回旋運動を反復したことで股関節周囲組織に摩擦が生じ、炎症が起こったと考えられます。

痛みのピークは発症初期であり、そこから炎症が落ち着くにつれて痛みは軽減しましたが、損傷していた前関節包は短縮した状態で治癒しました。

そのために関節包内の運動に異常が生じ、以前よりも容易に関節炎が起こりやすくなり、今回の再発へと至りました。

ここでまた経過とともに痛みが治まったとしても、仕事を続けているかぎりはまた痛みが起こる可能性は非常に高く、根本的な解決が求められます。

ひとつは股関節をねじる動きをなるべく減らすようにし、仕事の動きを改善できるように動作指導をすべきです。

そしてもうひとつが短縮した関節包をストレッチすることにより、関節包内の運動を改善させて外旋動作への耐久性を向上していきます。

具体的なアプローチ方法としては、患者には背臥位をとっていただき、患者の大腿骨を施術者の大腿部に乗せます。

そこから大腿骨遠位を下方に押し下げ、テコの原理を利用しながら大腿骨頭を股関節の上方に牽引するように力を加えていきます。

そうすることで前関節包は大腿骨頭によって引き伸ばされ、ストレッチングをすることが可能となります。

動きを反復することで十分に関節包を伸張したら、患者にはまた股関節外旋の動きをしていただき、同じ可動範囲で痛みが変化するかを確認していきます。

この操作で痛みが軽減するようなら原因は前関節包の短縮によるものと考えられるため、伸張していくことが症状の改善が期待できます。

炎症が残存しているようなら痛みがある操作はしばらく控えますが、落ち着いているなら在宅でのエクササイズも指導するようにします。

前述したように大腿骨頭は股関節の外旋・伸展・内転といった動きで前方突出するため、痛みの少ない方向と範囲で自らでも動かすようにします。

そのようにして関節包ストレッチの実施と動作指導(負担動作の軽減)を図ることで、再発を予防していくようにします。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在はフリーランスとして活動しています。詳細はコチラ
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