【リハトラ版】腰痛チェックシートのダウンロード

以前から作りたいと考えていた腰痛チェックシートを、腰痛持ちの私がやっと重い腰を上げて取りかかることにしました。

作るうえで注意したことは、①記入項目は少なく、②使用者の手間にならず、③各質問の根拠を示すの三点です。

これまでに評価表などを使用したことがあるセラピストならわかると思いますが、ほとんどの場合は途中で面倒になって使わなくなります。

使わなくなる理由のほとんどは、手間がかかるのと実施するメリットがないからだと思います。そのため、チェックシートは患者にすべて記入していただけるようにし、内容も簡潔にしています。

多くの腰痛症は原因が特定しづらいので、この質問を事前に実施しておくことで対象を絞ることができ、スムーズに必要な検査や治療に取りかかることができるといったメリットがあります。

個人で作成したので不備も多々あるかと思いますが、少しずつバージョンアップしながら実践でも活躍できるものを作り上げて、臨床の手助けになったらと考えています。

この記事の目次はコチラ

腰痛チェックシート ver.01

下記にシートのサンプル画像を掲載しています。ちなみにファイルはPDF形式で用意しました。もちろん無料です。腰痛チェックシートのダウンロードはコチラから

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Q1.あなたの年齢は何歳ですか。

ここからは各質問の根拠について解説していきます。

まず年齢ですが、20歳以下と55歳以上の腰痛はレッドフラグサインとなりますので、医療機関での精査が推奨されます。

理由として、20歳以下では腰椎分離症や強直性脊椎炎が、55歳以上では脊椎圧迫骨折や脊椎腫瘍、内臓疾患などから来る腰痛が考えられるからです。

中年者では椎間板障害やぎっくり腰、筋筋膜性腰痛症、心因性腰痛症などが多い傾向にありますが、これらは命に関わる障害ではなく、自然寛解する可能性が高い腰痛といえます。

若年者 中年者 高年者
椎間関節障害 椎間板ヘルニア 脊椎圧迫骨折
腰椎分離症 椎間板障害 脊柱管狭窄症
椎間板ヘルニア ぎっくり腰 腰椎終板炎
筋線維損傷 心因性腰痛症 背筋群の血流障害
強直性脊椎炎 仙腸関節障害 脊椎・脊髄腫瘍
筋筋膜性腰痛症 内臓由来性腰痛
椎間関節障害 血管由来性腰痛

Q2.あなたの性別は男性ですか。それとも女性ですか。

腰痛のピークは男性が30-50歳代、女性が60歳以降にあります。男性は椎間板障害や脊柱管狭窄症が多く、女性は骨脆弱性による腰痛や圧迫骨折が好発します。

中年の男性では仕事や家庭のことでストレスを抱えている場合も多く、そのような状況の中で椎間板障害などが発生すると腰痛を引き起こすリスクが高まります。

男性の高齢者で腰痛が減少する理由としては、椎間板が扁平化してしまうことで椎間板障害や椎間板ヘルニアが減少すること、力仕事やストレスのかかる場面が少なくなることが挙げられます。

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Q3.スポーツや運動を実施する習慣はありますか。

スポーツ習慣者では椎間関節障害や筋線維損傷などが多い傾向にあります。とくに15歳以下では腰椎分離症の初期症状である可能性が高いため、画像検査を実施することが大切です。

身体を一定方向に捻る動作が多いスポーツでは、片側の椎間関節炎を起こしている場合もありますので、運動習慣がある人にはどんなスポーツであるかも聴取しておくようにお願いします。

Q4.腰痛が発生する原因となった出来事はありますか。

受傷機転が明確な腰痛症はあまり多くありませんが、転落や転倒などで腰を痛めた場合は脊椎圧迫骨折の可能性が高いので、MRIなどで骨折を確認する必要があります。

ただし、高齢の女性では骨粗鬆症によって骨が脆くなっており、明確な出来事がないにも関わらず骨折をきたしている場合も多々ありますので注意して観察します。

ぎっくり腰に関しては、まだ原因が明らかとなっていない部分も多いですが、あまり安静にしすぎずになるべく早期に元の生活に戻すほうが治りは早いといったエビデンスがあります。

Q5.腰痛は重苦しい鈍い痛みですか。それともズキズキした鋭い痛みですか。

鋭利痛の場合は圧迫骨折や神経障害の可能性が高く、鈍痛では深部組織の虚血による痛みである可能性が高いといえます。

そのあたりを詳細に書くと長くなってしまいますので、詳しくは「痛みの原因と特徴を組織別にわかりやすく解説」の記事を参考にしていただけると幸いです。

慢性の重苦しい痛みで、体位を変えたり、安静にすることで軽減するタイプの痛みは、基本的に危険性の高い腰痛ではないことが多いです。

原因組織 痛み 強さ 場所
骨膜 鋭利痛 明瞭
神経 鋭利痛 明瞭
関節 鋭利痛 明瞭
筋膜 鋭利痛 不明瞭
靭帯 鈍痛 不明瞭
椎間板 鈍痛 不明瞭
筋肉 鈍痛 不明瞭
内臓 鈍痛 不明瞭

Q6.どの場所に痛みを感じますか。痛みがある部分に斜線を引いて下さい。

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臀部に痛みが出ている場合は、仙腸関節炎や殿筋群の筋筋膜性腰痛症の可能性があります。

下肢にまで痛みや痺れが波及している場合には、その知覚領域を支配している神経に問題が生じている、または筋膜の連結から波及していると考えられます。

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Q7.安静にしていても痛みがありますか。

姿勢を変えても痛みに変化がなく、安静にしていても痛みが持続する場合はレッドフラグサインのため、精査を実施する必要があります。

腰痛を起こしている原因としては、脊椎・脊髄腫瘍や脊椎炎、内臓関連痛などの可能性が考えられます。癌の既往がある場合は悪性腫瘍が発生するリスクが上昇します。

発熱やステロイド治療の既往などについても確認し、脊椎炎の可能性についても考慮します。

Q8.日や時間によって腰痛が楽になったり、つらくなることはありますか。

時間や活動性に関係のない腰痛はレッドフラグサインのため、精査を実施する必要があります。

まれにですが、動けないほどの痛みで寝込んでいたかと思うと、翌日にはケロッとしてスポーツが可能になるような腰痛が若年者に発生します。その場合は強直性脊椎炎が疑われます。

Q9.腰痛はどれぐらい前に現れましたか。

非特異的腰痛症の場合は変動性が高く、1ヶ月以内に80%の人で消失または軽減します。ただし、1年以内の再発率が60-90%と高く、腰痛を繰り返すことになります。

1ヶ月以上続く腰痛はレッドフラグサインとなるため、精査を実施する必要があります。

Q10.座っている時と立っている時ではどちらがつらいですか。

通常、立位時では椎間板が80%、椎間関節が20%の荷重を担っています。それが座位では骨盤が後傾し、腰椎が屈曲位となることで椎間板への負担が増加します。

また、座位で腰椎が屈曲すると背筋群が持続伸張されて虚血状態となります。その結果、血流障害による筋性腰痛症が発生します。

Q11.仕事で座っている時間と立っている時間はどちらが長いですか。

腰痛の多くは姿勢が深く関わっているため、一日の大半をどのような姿勢で過ごしているかを聞くことは重要です。

とくに仕事中は身動きがとれない状態にあることも多いため、あえて「仕事」とここでは限定しています。評価する際は実際の姿勢を確認し、腰痛タイプとの整合性の有無を判定します。

Q12.立ち続けている時よりも歩いているときのほうが楽ですか。

同一姿勢の持続が原因である場合は、歩いているときよりも立ち続けているほうがつらい傾向にあります。

持続的な重苦しい痛みの多くは虚血障害が関与しているため、動きがあったほうが身体的に楽となるケースが多いようです。

Q13.長い距離を歩くとき、足の重だるさやしびれなどで休憩が必要ですか。

歩行時に症状が悪化し、頻繁な休憩が必要な場合を間欠性跛行といいますが、これは脊柱管狭窄症に特徴的な症状です。

間欠性跛行は下肢の血流障害(閉塞性動脈硬化症)でも出現しますので、疾患を鑑別することも大切です。

Q14.咳やくしゃみで腰痛は悪化しますか。

椎間板障害の場合は、咳やくしゃみで急激に椎間板へ負担が加わり、痛みが増強します。そのため、くしゃみの前に無意識にモノを掴んで腰部を安定させようとする前行動が認められます。

椎間板よりも骨側にちかい腰椎終板に炎症が発生している場合は、痛みなどの症状は似ていますが、安定している場所に障害があるため、くしゃみの際の前行動はありません。

Q15.足にしびれなどの症状はありますか。

下肢に放散するしびれを確認することで、神経障害の有無を判定します。症状がある場合は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が疑われます。

馬尾障害などの広範囲にわたって認められる神経障害は、早期の手術が必要となるケースが多いので注意します。

筋膜性腰痛症などでも放散痛は出現しますので、その他の神経学的所見(反射や筋力検査)や画像検査を実施し、整合性を確かめるようにしてください。

Q16.立った状態で腰を前方に曲げるのと後方に反らすのはどちらが楽ですか。

前屈では椎間板や後縦靭帯、背部筋群にストレスをかけることでき、後屈では椎間関節や椎弓部にストレスをかけることができます。また、後屈では脊柱管が狭くなるため、脊柱管狭窄症で症状が悪化します。

急性腰痛症(ぎっくり腰)や鋭利な痛みがある腰痛症の場合には、腰部を動かすことが難しいと訴えます。

Q17.腰を動かすと痛みが強くなりそうだという不安はありますか。

心因性腰痛症はネガティブイメージが非常に強く、腰を動かすことに対して過剰な不安感を示すだけでなく、実際に動かすことで痛みを訴えます。

通常、治療において痛みがある方向への運動は行わないのが基本ですが、心因性腰痛症に対しては動かしても問題ないことを認知させるために、あえて痛い方向に動かすことが必要となります。

ここを鑑別できるかどうかは非常に難しい部分ではありますが、疑われる場合は随時に効果判定を実施しながら臨機応変に対応することが推奨されます。

Q18.仕事や家庭のことでストレスを感じることが多い。

腰痛を起こす心理社会因子として、①仕事に対する満足度、②仕事量の多さ、③仕事の単調さ、④職場の人間関係、⑤精神的ストレスが深く関わっていることが報告されています。

また、過労やストレスは自律神経に不調をきたし、交感神経優位となって疼痛閾値を低下させる原因にもなります。

質問内容はとても単調なものですので、ここで引っかかりを示す患者や、検査をしていく中で心因性の可能性が考えられる場合は、もう一歩踏み込んだところまで聞くことも必要といえます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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