上腕骨外側上顆炎(テニス肘)のリハビリ治療

上腕骨外側上顆炎のリハビリ治療について解説していきます。

上腕骨外側上顆炎の概要

上腕骨外側上顆炎は、テニスをされている方々に多く発症することから「テニス肘」とも呼ばれます。

しかし、テニスが原因となっている症例は全体のわずか10%程度であり、明確な受傷機転などが見当たらないケースがほとんどです。

また、上顆炎という名称ではありますが、実際には明確な炎症症状を伴っていないケースも多いです。

上腕骨外側上顆へのストレスを考える場合に、①上腕からの問題、②前腕からの問題のふたつを軸に考える必要があります。

上腕からのストレス

まずは上腕からのストレスですが、上腕骨外側上顆はアナトミー・トレイン理論におけるSBALに属しています。

アナトミー・トレインとは筋膜上の機能的な繋がりを示したものです。

例えば、外側筋間中隔に滑走不全が存在すると、その付着部である上腕骨外側上顆に強い牽引ストレスが加わることになります。

上腕の外側筋間中隔に滑走不全を起こす原因は癒着であり、上腕を断面図で見てみると上腕筋と上腕三頭筋外側頭が接しているのがわかります。

とくに問題となりやすいのは上腕筋であるため、外側筋間中隔のやや前方を指先でたどるようにしながら滑走不全を探していきます。

多くの場合は上腕骨外側上顆に近い場所で滑走不全が見つかるので、マッサージをするようにして滑走性を引き出します。

前腕からのストレス

前腕からのストレスを考える場合は、上腕骨外側上顆に付着する筋肉の滑走不全を中心にみていく必要があります。

付着する筋肉は6つありますが(図に掲載)、すべて起始のみであり、停止を持つ筋肉はありません。

通常、筋肉に滑走不全が存在していると停止側が痛くなりますが、テニス肘の場合は手首側を固定しているためか停止側に症状が現れやすいです。

テニス肘では、短橈側手根伸筋の影響が強いと考えられていますが、筋・筋膜性障害の多くは骨に近い部分に滑走不全が生じやすいです。

そのため、リリースポイントは橈骨付近を狙うほうが効果的です。

整形外科検査

上腕骨外側上顆炎の代表的な整形外科テストに『Thomsen test』があります。

方法としては、肘を伸ばしたまま手関節の背屈に対して抵抗を加え、手関節伸筋群起始部の疼痛を診ます。

テニス肘では高頻度に疼痛が出現しますが、肘関節より近位からの影響が強いケースでは、痛みがそれほど強くないケースも多いです。

リハビリテーション

上腕骨外側上顆炎は筋・筋膜性障害のひとつなので、①滑走不全のある組織のリリース、②疼痛誘発動作の制限のふたつが重要となります。

前述したように上腕骨外側上顆の痛みに対しては、ストレスを与えている原因が上腕外側または前腕外側に存在しています。

どちらにも問題が認められるケースも多いので、丁寧に触診していきながら滑走不全を見つけていき、その都度にリリースします。

患者教育については「疼痛誘発動作の制限」が主となりますが、中には炎症を伴っている患者もいます。

その場合は、組織リリースのみでは改善が難しくなるので、安静による消炎を目的としながら進めていくようにしてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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