上腕骨外側上顆炎(テニス肘)のリハビリ治療

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)のリハビリ治療について解説していきます。

上腕骨外側上顆炎の概要

上腕骨外側上顆炎は、加齢的変化によって筋肉や腱の退行変性などが起こり、そこに過度な負荷が加わることによって生じます。

好発年齢は30〜50代で、テニスをされている方々に多く発症することから「テニス肘」とも呼ばれます。

テニス肘の場合は、短橈側手根伸筋(extensor carpi radialis brevis:ECRB)が問題となっている場合が多いです。

テニスが原因となっている症例はわずか10%であり、全体の比率からみると発生頻度はそれほど高くありません。

臨床で遭遇しやすいのは「重量物の運搬作業」であり、肩周囲から上肢にかけての筋緊張増大や筋膜の滑走不全が影響しています。

上顆炎という名称ですが、炎症所見がほとんどない場合も多く、長期にわたって痛みが残存しているケースでは筋膜障害の可能性が高いです。

肘関節より近位からのストレス

肩周囲から上肢にかけての影響を考える場合に、筋膜上の機能的な繋がり、さらに繋がり上に連結する筋の緊張についてみていく必要があります。

上腕骨外側上顆に繋がる筋膜上の機能的な繋がりには、アナトミー・トレイン理論におけるSBALを知っておくと理解しやすいです。

僧帽筋や三角筋などは非常に硬くなりやすい筋肉なので、肩こりなどがある人では外側上顆の痛みが発生しやすい傾向にあります。

SBALの繋がり上に連結する筋の緊張ですが、重要なのは外側筋間中隔に連なる『上腕筋』と『上腕三頭筋外側頭』があります。

とくに上腕筋は硬くなりやすい筋肉なので、外側筋間中隔との間隙で滑走不全をリリースするようにアプローチしていきます。

整形外科検査

上腕骨外側上顆炎の代表的な整形外科テストに『Thomsen test』があります。

方法としては、肘を伸ばしたまま手関節の背屈に対して抵抗を加え、手関節伸筋群起始部の疼痛を診ます。

テニス肘では高頻度に疼痛が出現しますが、肘関節より近位からの影響が強いケースでは、痛みがそれほど強くないケースも多いです。

その場合は、手関節背屈の動きよりも肘関節屈曲などで痛みを訴えます。

リハビリテーション

上腕骨外側上顆の痛みに対しては、ストレスを与えている原因が肘関節より近位にあるか、遠位にあるかをみていきます。

原因は前述したように、①筋緊張の増大、②筋膜の滑走不全、③過度なストレス(オーバーワーク)が関与しています。

その中から、問題のある部分を選択して、必要に応じたアプローチ(リラクゼーションや筋膜リリース)を行っていきます。

フォーム指導はテニス経験のない素人には難しいですが、「橈側グリップではないか」と「腕だけで打っていないか」のチェックだけは行います。

橈側グリップは示指と中指に力が入り、短橈側手根伸筋への負担が大きいので、尺側グリップを意識するようにしてもらいます。

片手バックハンドストロークで順回転のボールを打つためには、強い手関節伸筋群の収縮が必要で、テニス肘の原因にもなります。

若年者のスポーツ障害である場合は、再発を避けるために両手でのバックハンドストロークへの変更も検討してください。

技術的に未熟な人はスウィートスポット(ラケット中央)から打点が外れるため、インパクト時の振動が大きくなり、肘部への負担が大きくなります。

また、上級者はインパクト時にのみ手関節の背屈筋や掌屈筋が強く収縮するのに対して、初心者はスウィングの間中ずっと筋収縮が起こっています。

これらの理由からテニス初心者に上腕骨外側上顆炎は起こりやすく、とくに中年以降に始めた人ほどリスクが高まります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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