ランニング時に肩甲骨上部が痛くなる理由

臨床において大殿筋の筋力低下は非常に多く経験しますが、それが結果的に肩甲骨上部の痛みに波及しているパターンもあります。

大殿筋の主な役割は股関節伸展と外旋であり、さらに歩行時は収縮することで仙腸関節を安定させる役割を担っています。

その大殿筋に何らかの理由で機能不全が生じている場合は、関節を安定させるために他のもので代償する必要が出てきます。

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どこで代償させるかですが、一般的には対側の広背筋との繋がりを用いて仙腸関節を安定させようと働きます。

広背筋が過剰に収縮すると肩甲骨が下制させられ、それを受け止めるために肩甲骨の挙上に関与する僧帽筋上部や肩甲挙筋が抵抗します。

それが結果的にランニング時の肩甲骨上部の痛みとなり、原因が大殿筋の機能不全が根底にある理由となります。

大殿筋に筋力低下が起きる原因としては、拮抗筋の緊張や短縮が多く、拮抗筋には腸腰筋・大腿直筋・股関節内転筋群が挙げられます。

治療においては、それらの拮抗筋をストレッチングするとともに、筋力低下をきたしている大殿筋を鍛えることが必要です。

ここでは大殿筋が原因で肩甲骨上部に痛みが出る理由を説明しましたが、もちろん過剰に収縮する広背筋に痛みが出る場合もあります。

または股関節伸展の機能を補うためにハムストリングスが過剰に働き、大腿後方に痛みが出現しているケースも多いです。

ヒトによって代償が出るパターンや負担が集中する箇所は異なる場合があるため、どのような動きで痛みが出るかは臨床的にも重要です。

特定の運動で痛みが生じる場合は、それに関与する筋肉の状態について深く観察してみてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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