リハビリをしても痛みが良くならない患者とは

原因を的確にとらえていなくても痛みが良くなるケースは多いですが、そのような患者のほとんどは痛みの原因が筋スパズムにあります。

過度な緊張状態が原因ですので、硬い筋肉をマッサージしたり、温めたり、軽く動かしてもらうだけでも痛みが軽減するわけです。

しかし、リハビリをしても全く痛みが良くならないケースというのは、痛みの原因が組織の癒着にあるからです。

癒着を剥離してしまわないことには症状の改善が認められず、永久的に痛みを伴った生活を強いられてしまうことになります。

棘下筋の癒着を例に挙げて解説していくと、棘下筋が短縮しているケースでは水平内転時に骨頭が前方にブレて痛みが起こります。

もしも棘下筋に強い筋スパズムと癒着が存在しており、それが原因で疼痛が生じていると仮定してから治療を考えてみます。

順序としては、①筋スパズム(圧痛)をとる、②筋肉を伸ばす、③癒着を剥離するといった要領で進めていきます。

棘下筋は菱形筋と筋膜連結しているので、まずは肩甲胸郭関節の動きに働いている菱形筋が緩まるようにアプローチします。

その後に棘下筋に触れることで、多少なりに緊張が落ち着いた状態で治療していくことができるようになります。

リラクゼーションの方法は基本的に何でもよく、軽いマッサージや自動介助運動(MMT1レベル)を反復して圧痛が消失するまで行います。

筋スパズムが緩んだら等尺性収縮を伴った自動介助運動を加えていき、筋腱移行部の筋節を増やすことを目的に実施します。

そして最後に癒着剥離をしていきますが、癒着があるかどうかの判断は筋肉をストレッチさせることでわかります。

伸ばして筋全体が硬くなるようなら筋肉自体の短縮であり、筋肉はやわらかいままで腱だけ張るようなら癒着が存在していると考えられます。

棘下筋は肩甲骨の棘下窩の広範囲から起始していますが、棘下窩の遠位(上腕骨付近)には付着していません。

そのように本来は付着していない部分に癒着は生じることになるため、硬さを感じながら剥離操作を加えます。

具体的な方法としては、2枚の貼り付いた紙を剥がすような意識で摩擦を加えたり、指を間に押し込んで亀裂を入れるようにしていきます。

そこから等尺性運動を伴う自動介助運動を実施することで、徐々に癒着が剥がれていくようになります。

癒着組織に亀裂を入れて筋収縮させることで徐々に剥離していき、最後に疼痛誘発動作を再度実施してもらうことで改善の有無をみます。

この作業を繰り返すことが永続的な痛みをとることにつながるので、まずは原因部位をしっかりと捉えることが大切となるわけです。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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