上位胸椎の後弯と障害リスクについて

先日に担当した患者さんの話になりますが、主訴は左頸部〜肩にかけての痛みで、リハビリ初回時には左肩痛はやや軽減していました。

X-pでは上腕骨頭の上方変位とC6/7椎間関節の過伸展、MRIでは腱板断裂(1.7㎝)が認められました。

脊椎のアライメントは、頭部前方位、頸椎伸展位(特に下位)、上位胸椎屈曲位、下位胸椎〜腰椎の平坦化がみられました。

腱板断裂がフラットバックやスウェイバックなどの不良姿勢に好発しやすいことはよく知られていますが、その原因が「上位胸椎の後弯」です。

上位胸椎が後弯(屈曲)すると肩峰下スペースが減少するため、肩峰下インピンジメントが生じやすくなり、腱板断裂を引き起こします。

上位胸椎が屈曲すると頭部前方位となり、下位頸椎の伸展が増強し、結果的に下位頸椎の椎間関節障害も誘発しやすくなります。

椎間関節障害を考える際は、その関連痛について知っておくことが大切で、頸部から肩にかけて痛みが放散する場合は下位頸椎の障害が疑われます。

疼痛は椎間関節に圧縮ストレスを加える動き(伸展や左側屈)で再現されたため、疼痛誘発組織は頸椎椎間関節である可能性が高いと考えられました。

さらに原因レベルを絞るためには、C6/7の動きを止めた状態で伸展させて痛みが消失するなら、C6/7レベルであると判断できます。

MRIで腱板断裂は確かに存在していましたが、そこが必ずしも疼痛誘発組織であるかは、他にいくつかの検査をしない限りはわかりません。

実際に腱板断裂があっても痛みがない(過去にもない)ケースは多く、画像検査は障害の確定診断にはなっても、疼痛誘発組織の確定診断とはなりません。

そのことを理解したうえでリハビリを進めていかないことには、患者の痛みを取り除くことは難しいです。

今回の患者さんは明らかに普段の姿勢が影響していたので、原因レベルの椎間関節に負担を集中させないアライメントの調整を指導しました。

慣れてくると姿勢をみるだけで「起こりやすい障害」と「起こりにくい障害」はある程度に予測することができます。

下位頸椎が伸展位になりやすいということは、屈曲位をとりにくいので、そのレベルの椎間板症は生じにくくなります。

そのようにして負担のかかりやすい場所と疼痛誘発組織をイメージしながら、治療プログラムを組み立てていくことが大切です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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