この記事では、上腕三頭筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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上腕三頭筋の概要
上腕三頭筋は3つの起始を持っており、長頭では腋窩神経、内側頭と外側頭では橈骨神経に支配される二重神経支配筋になります。
上腕筋群の中で最も体積が大きく、長頭は肘関節と肩関節をまたぐ二関節筋、外側頭と内側頭は肘関節のみをまたぐ単関節筋になります。
上腕三頭筋の停止は尺骨肘頭ですが、内側頭の深部線維の一部は肘関節後方関節包に進入します。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | ①長頭:腋窩神経
②内側頭:橈骨神経 ③外側頭:橈骨神経 |
髄節 | C6-8 |
起始 | ①長頭:肩甲骨の関節下結節
②内側頭:上腕骨後面(橈骨神経溝より内側) ③外側頭:上腕骨後面(橈骨神経溝より外側) |
停止 | 尺骨肘頭 |
栄養血管 | 上腕深動脈 |
動作 | 肘関節の伸展
長頭のみ:肩関節の伸展,内転 |
主な拮抗筋 | 上腕二頭筋 |
筋体積 | 620㎤ |
筋線維長 | 8.1㎝ |
速筋:遅筋(%) | 67.5:32.5 |
運動貢献度(順位)
貢献度 | 肘関節伸展 | 肩関節伸展 |
肩関節内転 |
1位 | 上腕三頭筋 | 広背筋 | 広背筋 |
2位 | 肘筋 | 大円筋 | 大胸筋(下部) |
3位 | - | 三角筋(後部) | 大円筋 |
4位 | - | 上腕三頭筋(長頭) | 上腕三頭筋(長頭) |
※上腕三頭筋長頭は二関節筋のため、肩関節にも重要な役割を持っています。
上腕三頭筋の収縮方向
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上腕三頭筋の長頭のみは肩甲骨に付着しているため、そのベクトルから内側(内転)に引かれるのがわかります。
長頭は肩関節屈曲位で強い肘関節伸展力を発揮しますが、肩関節伸展位では弛緩するために伸展力が低下します。
内側頭は上腕三頭筋の中で最も深部に位置しており、関節の安定性や肘の微妙な動きを調整していきます。
これはまさに深層筋(インナーマッスル)と同じ働きであるため、上腕三頭筋の内側頭は深層筋の一種と考えられます。
上腕中央の断面図
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上腕を断面図で見た場合、上腕三頭筋は筋間中隔にて上腕筋および上腕二頭筋と仕切られているのがわかります。
内側頭が最も中心に位置しており、外側頭および長頭が内側頭を取り囲むように位置しています。
長頭のみは上腕骨との付着を持たず、上腕の表層を通過しています。
上腕三頭筋の触診方法
上腕三頭筋は3つの起始を持っているため、それぞれの筋肉を触診する必要があります。
①上腕三頭筋長頭
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写真では、肩関節屈曲位からの肩関節伸展運動にて、上腕三頭筋長頭の筋腹を触診しています。
長頭のみが二関節筋であり、肩関節の伸展と内転に作用します。
②上腕三頭筋内側頭
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肩関節最大伸展位、肘関節軽度屈曲位からの肘関節伸展運動にて、上腕三頭筋内側頭の収縮が触知可能です。
最深部にある内側頭が最も強く、最初に収縮する部位になります。
③上腕三頭筋外側頭
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上肢を下垂した状態で、肘関節を伸展方向に軽く力を入れるだけで外側頭の収縮が触知できます。
最も表層に位置する筋肉で、身体を支えながら伸ばす動作やボクシングでサンドバックを打ったときの衝撃などで損傷します。
ストレッチ方法
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肘関節と肩関節を最大屈曲させて、さらに反対の手で後方に引き寄せていくことで、上腕三頭筋長頭を選択的にストレッチできます。
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肩関節を最大屈曲・外転・外旋位として、さらに反対の手で伸張していくことで、外側頭を選択的にストレッチできます。
筋力トレーニング
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ベッドやベンチに片膝を乗せて上半身を前方に倒し、反対側の手でダンベルを把持して肘関節を伸展します。
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両手をベッドの端に置き、下肢を前方にずらして上腕で体を支えるように重心を移動していき、その姿勢から肘関節を屈伸します。
トリガーポイントと関連痛領域
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上腕三頭筋の起始付近にトリガーポイントが存在すると、肩関節〜前腕後方に痛みが放散し、肩関節の結帯動作に制限が生じます。
上腕三頭筋の停止付近にトリガーポイントが存在すると、肘関節〜上腕後方に痛みが放散し、肘の屈曲制限を引き起こすこともあります。
アナトミートレイン
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上腕三頭筋はDBAL(ディープ・バックアーム・ライン)という筋膜経線上に存在しており、このラインは筋膜を介して小指球筋に繋がります。
そのため、上腕三頭筋に関連痛が起きると小指にまで痛みが波及し、第7頸椎の神経根症と似た症状を訴えます。
DBALの筋膜障害では、頚椎の動きでは痛みが変化しないため、神経根症と鑑別できるようにすることが大切です。
関連する疾患
- 投球障害肩
- 外傷後肘関節拘縮
- 肘関節後方インピンジメント
- 異所性骨化
- ベネット骨棘
- 橈骨神経麻痺 etc.
肘関節後方インピンジメント
上腕三頭筋内側頭線維の一部は、肘関節の後方関節包に進入しています。
その線維があることで肘関節伸展時にたるむはずの後方関節包および後方脂肪体が上方に引き上げられ、挟み込みを防ぐことができます。
このことから、自動的な肘関節伸展よりも他動的な肘関節伸展のほうがインピンジメントを起こしやすく、肘頭部に疼痛を訴えます。
このような症例では、内側頭の収縮を促通させることでインピンジメントが解消され、肘関節の後方痛が軽減します。
また、上腕三頭筋の中でも内側頭は攣縮(過度な緊張)が生じやすく、外傷後の肘関節屈曲制限に関与していることもあります。
その場合は、内側頭のマッサージや軽い反復収縮を促して攣縮を除去することで、屈曲可動域の改善が期待できます。