この記事では、上腕筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
この記事の目次はコチラ
上腕筋の概要
上腕筋は上腕前面のやや深層に位置する筋肉で、扁平の形状をしており、肘屈曲筋の中で最も強力に働きます。
上腕骨を下半分を覆うように付着しており、上腕二頭筋が橈骨に停止するのに対し、上腕筋は尺骨に停止するため、前腕の回内外へは関与しません。
腱成分が非常に少なく、筋肉全体が筋腹といった形状をしています。
柔軟性に富んでいる反面、怪我などで長期にわたって屈曲位に固定すると線維化が進みやすく、肘関節屈曲拘縮の原因となりやすい筋肉です。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 筋皮神経(しばしば橈骨神経からも) |
髄節 | C5-6 |
起始 | 上腕骨前面の下半分および筋間中隔 |
停止 | 尺骨粗面、肘関節前方関節包 |
栄養血管 | 橈骨反回動脈 |
動作 | 肘関節の屈曲 |
筋体積 | 266㎤ |
筋線維長 | 10.3㎝ |
筋連結 | 三角筋、上腕三頭筋、烏口腕筋 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
肘関節屈曲 |
1位 | 上腕二頭筋 |
2位 | 上腕筋 |
3位 | 腕橈骨筋 |
4位 | 長橈側手根伸筋 |
上腕二頭筋に比べて体積の小さい上腕筋ですが、羽状筋なので生理学的筋横断面積が大きく、体積の割に強い力を発揮します。
筋出力というのは、体積よりも横断面積に比例して大きくなります。
また、上腕筋はその走行から純粋に肘関節屈曲に作用するため、運動への貢献度も高くなります。
上腕筋は表層に存在する上腕二頭筋を骨に押さえつける役割も担っており、上腕二頭筋が働いている時には絶えず同時に働いています。
上腕中央の断面図
![]() |
上腕を断面図で見た場合、上腕筋は上腕骨にびっしりと付着しており、さらに筋間中隔の一部にも付着を持っていることがわかります。
上腕筋の触診方法
上腕筋を触診する重要なポイントは、肘関節屈曲に伴う上腕二頭筋の活動をいかに排除するかです。
収縮を抑えられる方法として、肩関節を深く屈曲し、肘関節も90度屈曲位から運動を始めることが大切です。
写真では、肩関節と肘関節を90度屈曲、前腕回内位からの肘関節屈曲運動にて上腕二頭筋の下方を走行する上腕筋を触診しています。
ストレッチ方法
![]() |
肩関節を90度屈曲した状態で反対側の手で手掌を掴み、手関節を背屈することで肘関節を伸展していきます。
上腕筋のみを選択して伸張することは困難なので、選択的に伸ばしたいときはダイレクトストレッチングが
筋力トレーニング
![]() |
ダンベルや重りを両手に持ち、前腕は回内に把持した状態で、肘関節をゆっくりと屈伸していきます。
関連する疾患
- 肘関節屈曲拘縮
- 筋皮神経麻痺 etc.
肘関節屈曲拘縮
上腕筋は浅頭と深頭に分かれており、浅頭は尺骨粗面に停止し、深頭は肘関節の前方関節包に結合織を介して密着しています。
上腕筋が収縮することで肘関節屈曲時にたるむはずの前方関節包が上方に引き上げられ、挟み込みを防ぐことができます。
このことから、自動的な肘関節屈曲よりも、他動的な肘関節屈曲のほうがインピンジメントを起こしやすく、肘窩部に疼痛を訴えやすくなります。
筋皮神経麻痺
![]() |
筋皮神経は烏口腕筋の筋腹を貫通しており、貫通後は上腕二頭筋と上腕筋に分布し、その後は前腕外側皮神経となります。
そのため、烏口腕筋の攣縮で筋皮神経麻痺が起こると、肘関節の主力筋である2つが障害を受け、顕著な屈曲力の低下が生じます
また、筋力の低下に加えて前腕外側の知覚異常も併発します。