下腿及び足部を評価していくためのポイントを写真付きでわかりやすく解説しています。あらかじめにどこを診るかを決めておくことで、スムーズに全体像を把握することができるようになります。
下腿・足部前面の触診
前面で触診していく部位として、まず下腿疲労骨折を起こしやすい脛骨前縁の近位内側、脛骨前縁の遠位内側、脛骨前縁の中間外側の圧痛を確認していきます。
次に脛骨前縁外側を下降している前脛骨筋、母趾伸展時に足背に腱が浮き上がる長母趾伸筋、第2-5趾伸展時に腱が浮き上がる長趾伸筋を触診します。前脛骨筋はオーバーワークで炎症を起こすことがしばしばあります。
足部前面からは足関節(距腿関節)の関節裂隙に触れますので、裂隙の幅や動き、圧痛の有無などを確認していきます。関節包内に炎症が起きている場合は腫脹や圧痛があります。
捻挫を繰り返す、関節リウマチで炎症が続く、関節内骨折を過去に経験してアライメントに変化をきたしているなどがあると、変形性足関節症を発症する場合もあります。
女性では外反母趾や内反小趾が発生している場合も多いので、足趾の状態についても診ておくことが大切です。痛風性関節炎では第1趾のMTP関節に痛みが好発します。
足部内側の触診
足部内側では脛骨内果の後方を走行して舟状骨に付着する後脛骨筋腱を触診します。足関節を内反させることで腱が浮き上がるので触知しやすくなります。後脛骨筋は内果との摩擦でしばしば炎症を起こします。
足関節は内反捻挫を非常に起こしやすい部位ですが、外反捻挫を起こすことはあまり多くありません。その理由として、脛骨内果よりも腓骨外果のほうが下方まで続いてるために、外側への安定性が高くなっていることが挙げられます。
また、強力な三角靭帯によって外反は制御されているため、骨的にも靱帯的にも強い部位となっています。三角靱帯は脛骨内果から発生して舟状骨・距骨・踵骨に付着しているので、外反を加えながら緊張を触知していきます。
最外層には脛骨と踵骨を連結する屈筋支帯があり、屈筋支帯と骨の隙間を足根管と呼んでおり、脛骨神経や後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋などが通過しています。
足根管で脛骨神経が圧迫されて麻痺が起きる障害を足根管症候群と呼んでおり、足底の知覚障害を主訴として現れます。
足部外側の触診
足部外側は靱帯が数多く付着していますので、それぞれの位置を念頭に置きながら押圧を加えて触診していきます。
腓骨外果前方と距骨を連結する前距腓靱帯、腓骨外顆と踵骨を連結する踵腓靱帯は内反捻挫などでとくに損傷されやすい部位なので、しっかりと触知しておきます。
前距腓靱帯が損傷している場合は、足部の内反や前方への動揺性が増しているので、脛骨を固定した状態での距踵骨の前方引き出しや足関節内反の緩みを確認して不安定性を評価します。
捻挫後に適切な対応がとられていない場合は靱帯が伸びたまま固まってしまうことがあり、関節が緩い状態となってしまいます。そうすると、捻挫を繰り返すといった悪循環に陥ります。
腓骨外果の後方は腓骨筋腱が通過しており、短腓骨筋腱は第5中足骨に停止します。長腓骨筋腱は足底から内側に周りこみ、第1中足骨と内側楔状骨に停止します。腓骨筋腱は摩擦や過用でしばしば炎症を起こします。
下腿・足部後面の触診
下腿後面で重要なのはアキレス腱で、炎症がある場合は足関節背屈にて伸張させると痛みが出現します。また、踵骨付着部の外側に圧痛を認める場合があり、その際は踵骨後部滑液包炎を疑うことができます。
アキレス腱の走行を視診で確認することにより足部の外反や内反を判定することができます。5度以上の角度がある場合は外反足となり、足底内側で体重を支えるために足底アーチが低下して扁平足をきたします。
普段から足底のどこに負荷が加わっているかを判定する方法として、靴底の磨り減っている部分をみることで、簡単に荷重部位を特定することができます。
腓腹筋の肉離れは内側頭の筋腱移行部に起こりやすいため、腓腹筋の圧痛についても確認しておきます。
足底の触診
母趾を伸展させることで足底腱膜の内側が浮き上がってくるので触知します。そこから踵骨の付着部を確認して、足底腱膜に痛みがないかを触知していきます、
足底腱膜には歩行時のスプリングとしての役割や、深層を通過する血管や神経を保護するといった役割があります。