五十肩に対する筋リラクゼーションの目的

肩関節周囲炎(五十肩)は別名で「癒着性関節包炎」とも呼ばれ、名前のとおりに関節包に炎症が起きることで生じます。

炎症は関節包全体に生じますが、場所によって炎症の程度に違いがある可能性もあります。

本日に担当した患者では、五十肩になって数ヶ月ほど経過しており、肩関節下垂位(1st:ファースト・ポジション)の外旋が重度制限でした。

肩関節屈曲は他動で140度ほどあり、結帯動作もL2レベルとなっていました。

この結果から、肩関節前方の関節包の縮小は重度で、肩関節後方の関節包の縮小は中等度だと判断しました。

そもそも肩関節は伸展よりも屈曲のほうが、1stの外旋よりも内旋のほうが関節可動域は大きくなっています。

そのため、関節包前方が縮小するほうが動きがさらに制限されることになるので、同程度の縮小でも動かせる範囲が狭くなります。

関節包の炎症と筋肉の防御性収縮は関連があり、関節包前方に炎症があると、肩関節が伸展や外旋して関節包が引き伸ばされるのを防ぐために、肩関節の屈曲や内旋に作用する筋肉が緊張します。

肩関節内旋に作用する筋肉は、肩甲下筋、大胸筋、広背筋、大円筋となっているので、各筋肉の硬さをチェックしていきます。

肩関節屈曲に作用する筋肉は、三角筋前部線維、大胸筋上部線維、上腕二頭筋となっているので、各筋肉の硬さをチェックしていきます。

これらの筋肉に強い緊張があるようなら、関節包前方の炎症が強いと考えられるので、防御性収縮している筋肉のリラクゼーションを行います。

この考え方は関節包後方でも同様であり、肩関節外旋や伸展に作用する筋肉の硬さをチェックし、必要に応じて緩めていきます。

防御性収縮はあくまで痛みのある組織(炎症部位)を守ろうとする反応なので、緩めて動きを引き出すことだけが目的となってはいけません。

動きを引き出すことができたら、痛みのない範囲で動かすことにより関節包の縮小を最小限に抑えることができるので、緩めたあとに無理のない範囲で動かすようにしてもらいます。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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