五十肩に対する関節モビライゼーションの効果

肩関節周囲炎(五十肩)の拘縮期以降は、関節包の縮小が主な関節可動域制限の原因となります。

関節包の主な構成成分はコラーゲンであり、その器質的変化が影響するため、治療ではコラーゲンに変化を与えることが必要です。

即時的に変化を与えられるのは温熱のみですが、その適用温度は非常に高く、臨床で行っている温熱療法では即時効果を得ることは不可能です。

それは関節モビライゼーションも同様であり、1回の施術でその器質的変化を改善させることはあり得ません。

コラーゲンの半減期は約300日と非常に長く、置き換わるまでに長期間を要するため、五十肩の改善には時間がかかることになります。

つまり、関節包の器質的変化の改善を期待するためには、「頻回な継続した治療」と「変化が起きるまでの時間」が必須となります。

これは関節包に限った話ではなく、筋膜や皮下組織なども同様に主な構成成分はコラーゲンであり、その器質的変化が制限に影響しています。

そのため、器質的変化が存在する部分に温熱やマッサージ(摩擦熱)を加え、置き換わるのを待つことが重要となってきます。

筋収縮が原因の可動域制限なら即時に改善できますが、コラーゲンの器質的変化が原因なら即時の改善はできません。

このことを念頭に置きながら治療することで、たとえ効果が乏しくても、自分で納得のいく治療を提供することができるようになるはずです。

結論を書くと、五十肩に対する関節モビライゼーションの効果は即時的なものではなく、長期的には期待できるかもしれない程度のものです。

しかし実際は、即時に可動範囲を広げることもできる(コラーゲンの変化とは別の要素)ので、うまく活用することができたら有効手段になり得ます。

動かさないことには拘縮が改善することはないので、疼痛が落ち着いているなら積極的に動かしていってください。

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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