五十肩(肩関節周囲炎)のリハビリ効果と後遺症について

五十肩は放っておいたら治ると考えている医者も多いですが、実際に1〜2年ほど放っておいたら痛みも落ち着いて肩も挙がるようになります。

病院では理学療法士などが治療にあたることもありますが、発症初期からリハビリを受けたからといって早く治ることもありません。

治療に関する本を読んでも五十肩に対する効果的な方法が書かれていることはほとんどなく、徒手的に改善させることは不可能です。

ネットで検索してみると、自称ゴッドハンドが「治せる」と書いていたりしますが、絶対に治らないので騙されないでください。

五十肩は別名で肩関節周囲炎といいますが、五十肩を治せるというのは炎症を治せるのと同じ意味になります。

怪我をして赤く腫れて痛みが出ている部分(炎症部位)を押したり揉んだりしたからといって、早く治らないことは素人にも容易に想像がつくはずです。

ここまでの文章を読んでくださった方は、それなら病院に行く必要もないのではないかと考えるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

理由としては、まずはその症状が本当に五十肩から来るものかをしっかりと専門医に診断してもらう必要があるからです。

患者の中には、腱板損傷や上腕二頭筋長頭腱炎、肩峰下滑液包炎、烏口突起炎など、痛みの原因がはっきりしている場合もあります。

そのような障害に対しては適切な治療が必要となるため、まずは病院で診断を受けることがなによりも大切です。

次に、五十肩への治療効果はほとんどないと書きましたが、それは発生してから3ヶ月ほどの期間であり、炎症がピークになるまでの間です。

そこからは肥厚して硬くなった関節包(関節を包んでいる膜)を伸ばしていくことで、肩を動かせる範囲が拡がっていきます。

ここが非常に重要な部分であり、適切な治療を受けていないで放置していた五十肩というのは、関節包が硬いままとなっていることが多いです。

そうすると肩関節が正常な関節運動を行えないために、正常なら負担のかからない部分に摩擦や圧迫が生じ、後々に痛みを起こします。

これは五十肩の後遺症によって引き起こされた障害であり、適切な治療を受けていたなら防ぐことができたと考えられます。

先日も肩関節の痛みと拘縮でリハビリを受けに来た患者がいましたが、とくに受傷機転もなく、腱などが損傷している可能性もありませんでした。

話を聞いてみると、10年ほど前に五十肩をしたとのことで、そのときは仕事が忙しかったので放置していたら自然と治ったとのことでした。

そこから関節包の硬さをチェックしてみると、やはり硬い状態でしたので、そこから徒手的に伸ばしていくことで拘縮はかなり改善しました。

治療家向けに具体的な方法を書くと、肩関節を110度ほど屈曲した状態から上腕骨頭を後下方にグイグイと押し込みます。

これはいわゆる関節陥凹(関節包の下方)を引き伸ばす手技であり、五十肩のほとんどはこの部分の容積が減少しています。

慣れてくると抵抗感から関節包が短縮しているかどうかもわかりますので、いろいろな方向に動かし、どの部分が硬いかをチェックします。

先ほどの例にあげた患者では、関節陥凹を伸ばすことで即時に肩関節の屈曲可動域が改善できましたので、後遺症を強く疑うことができました。

五十肩そのものは同じ側に再発することは非常に稀であるため、過去に経験したことがあるかを聞くことは非常に重要です。

あなたがもしも肩の痛みで困っているようなら、「どうせ五十肩だから」と放置せずに、一度は病院を受診するようにしてください。

そして、痛みが落ち着いてきたら硬くなっている周囲組織をリハビリでしっかりと伸ばしてもらい、障害を残さないようにしましょう。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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