人工肩関節置換術と人工骨頭置換術のリハビリ治療

肩関節における人工骨頭置換術および人工肩関節置換術後のリハビリ治療について解説していきます。

人工肩関節置換術の概要

人工肩関節置換術(Total Shoulder Arthroplasty:TSA)は、関節リウマチなどにより肩関節が骨性に破壊された状態のときに適応される手術法です。

変形性肩関節症も適応となりますが、日本では罹患者がとても少ないため、ほとんどの場合は関節リウマチによる著しい変形が対象となります。

手術では三角筋と大胸筋を展開し、小結節に付着している肩甲下筋を切離し、その後に骨頭部を切除して関節窩の形を整えます。

骨頭を切除した骨幹部に人工骨頭を挿入し、整えた関節窩に人工関節窩をセメントで固定していきます。

そして、最後に切離していた肩甲下筋を小結節に再縫合します。

変形性関節症に対する人工関肩節置換術

人工骨頭置換術の概要

人工骨頭置換術は、上腕骨近位端骨折により骨頭部が粉砕されている場合に適応されることが多い手術法です。

一般には60歳以上の3-4part骨折、脱臼骨折、重度の骨粗鬆症で強固な内固定が困難な症例が対象となります。

手術では三角筋と大胸筋の間を展開し、上腕骨を①骨頭、②大結節、③小結節、④骨幹部の四つに分離します。

骨頭を摘出した後に人工骨頭を挿入し、その後に分離させていた大結節と小結節を元の位置に整復して、それぞれをつなぎ合わせて強固に固定していきます。

高齢者で骨の脆弱性が強い症例が多いため、一般的に人工骨頭の固定には骨セメントが用いられます。

骨折に対する人工骨頭置換術

リハビリテーション

術後は無理のない範囲で日常生活は許可されますが、筋力トレーニングは術後8週以降とし、重労働については術後3カ月以降で許可される場合が多いです。

関節可動域運動は術後より開始し、振り子運動や自動介助運動を中心に実施し、徐々に自動運動に移していきます。

手術では肩甲下筋を切離しているため、術後3週まではストレスが加わらないように肩関節伸展と外旋の関節可動域の拡大は慎重に行ってきます。

筋力トレーニングはセラバンドを用いた運動が効果的で、腱板筋強化、肩甲骨固定筋強化(主に僧帽筋)、三角筋強化を中心に実施していきます。

回旋腱板筋強化

肩関節外旋(棘下筋/小円筋)

肘関節を90度屈曲し、脇が開かないように体側に上腕をしっかりと引き付け、チューブを引っ張るようにして肩関節を外旋していきます。

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肩関節内旋(肩甲下筋/大円筋)

肘関節を90度屈曲し、脇が開かないように体側に上腕をしっかりと引き付け、チューブを引っ張るようにして肩関節を内旋していきます。

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肩関節外転(棘上筋)

立位にてチューブを把持した状態で、肩関節を30-45度の範囲で外転していきます。力が入りすぎると肩が挙がるので、無理のない範囲で反復していきます。

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肩甲骨固定筋強化

肩甲骨内転(僧帽筋/菱形筋)

胸を張るようにして左右の肩甲骨を近づけるように誘導していきます。うつ伏せでダンベルなどを把持することで負荷を加えることも可能です。

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肩甲骨外転(小胸筋/前鋸筋)

ダンベルを把持した状態で手を上方に突き上げるようにしていきます。

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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