褥瘡を予防するためのポジショニングについて解説していきます。
この記事の目次はコチラ
ポジショニングの基本
ポジショニングをする上で注意すべきポイントは、①圧の分散、②筋緊張の抑制の2つです。
そのためには、まずは基本的な安楽肢位について理解しておく必要があります。
安楽肢位は背臥位と左右側臥位の3パターンで、クッションや枕などを使用して整えていきます。
通常、体位変換は2時間毎に実施します。
ポジショニング後は、以下の表に示す圧迫されやすい箇所を中心にチェックし、しっかりと圧が分散できているかを手を入れて確認していきます。
背臥位 | 側臥位 |
頭骨部 | 耳介部 |
肩甲骨部 | 肩鎖関節部 |
脊椎突起部 | 側胸部 |
肘関節部 | 大転子部 |
仙骨部 | 膝関節外側部 |
踵部 | 足関節外踝部 |
背臥位のポジショニング
背臥位の基本は、身体の捻じれをなくして正中位を保持することです。
身体とベッドに隙間がないようにクッションを入れることで圧を分散していきます。
引用画像:すぐに使える拘縮のある人のケア |
側臥位のポジショニング
側臥位では骨の突出部が圧迫されやすく、褥瘡のリスクがやや高いです。
また、肩に痛みがある場合は疼痛側を下方にできないこともあります。
引用画像:すぐに使える拘縮のある人のケア |
30度側臥位のポジショニング
完全な側臥位が難しい場合は、30度だけ傾けた側臥位をとる方法も有効です。
その際は、背臥位で主に圧迫される脊椎突起部や仙骨部を中心に除圧していきます。
引用画像:すぐに使える拘縮のある人のケア |
上肢や手指の屈曲拘縮が強い場合
麻痺によって上肢が強く曲がっている場合は胸を圧迫してしまうことになるので、大きめのクッションなどを胸に置いて抱え込むようなポジションをとります。
麻痺によって指を強く握りこんでいるケースは、包帯やタオルなどで作ったハンドロールを手の中に入れて握りこみを防ぎます。
あまり大きすぎるとさらに力が入ってしまう場合もあるので、軽く握った状態をとるように調整していきます。
拘縮が起こりやすい関節
下記の表は臥床によって可動域制限が起こりやすい部位と制限方向、それに伴って短縮する筋肉をまとめたものになります。
ひとつ上のポジショニングを目指すなら拘縮が起こりやすい関節と方向を頭に入れておき、患者の関節の動きをみながら微調整を加えていきます。
とくに筋肉の緊張が強い部分や痛みがある関節は拘縮を起こしやすいので、体位変換の時間を短くしたりと臨機応変に対応することも有用です。
順位 | 部位 | 制限方向 | 短縮筋 |
1 | 体幹 | 側屈,後屈,回旋,前屈 | 脊柱起立筋群 |
2 | 頚部 | 側屈,後屈,前屈,回旋 | 胸鎖乳突筋,斜角筋群 |
3 | 股関節 | 内旋,外転,伸展 | 梨状筋,内転筋群,腸腰筋 |
4 | 足関節 | 背屈 | 下腿三頭筋 |
5 | 手関節 | 掌屈 | 手関節背屈筋 |
6 | 肩関節 | 外転,屈曲,外旋 | 大胸筋,大円筋,小円筋 |
7 | 肘関節 | 伸展 | 上腕二頭筋 |
8 | 膝関節 | 伸展 | ハムストリング |
筋肉の緊張を軽減させる
綱渡りをすると全身に力が入るように、ヒトは不安定な場所にいると筋肉が過剰に緊張してしまう傾向にあります。
障害を持つ方や高齢者では感覚が鈍感になっていますので、本来は安定しているはずの姿勢でも不安定さを感じている場合が少なくありません。
姿勢やクッションの使い方によって筋肉の緊張は変化しますので、力が抜けるポジションを探していき、その人に合った場所を見つけることが大切です。