仰向けで寝たら腰が痛くなる原因と治療方法について解説

腰痛を理由に病院を受診してくる患者で、仰向けだと腰が痛くて眠れないと訴えられる方々は非常に多くおられます。

そのような方々に家ではどうやって寝ているのかを尋ねると、横向きで抱き枕を持ちながら寝ると楽だと答えます。

本来、仰臥位という姿勢は腰椎に負担のかかる状態ではなく、姿勢保持筋の緊張も必要としない姿勢のはずです。

それにも関わらず、仰向けだと腰が痛くて眠れないというのは、一体どのような原因が潜んでいるのでしょうか。

その理由を解説していくためにも、まずは以下の図を見てください。

仰向けで腰痛が起こる理由

仰向けで脚を伸ばして寝ている状態というのは、腰椎の前弯が保持されて、腰が床から浮いた姿勢となります。

そうすると背中と殿部で身体を支えるため、その間に存在する後方筋膜が伸張ストレスを受けてしまいます。

そこに大腰筋の過緊張などが存在すると腰椎の前弯を強めてしまい、更なる痛みを助長することにつながります。

膝を曲げて寝ると腰痛が楽な理由

一般的には、上図のように膝関節を屈曲することで腰痛が楽になりますが、これは腰椎の前弯が減少することに由来しています。

股関節が屈曲することで大腰筋が緩み、骨盤が後傾して前弯が減少しますが、そこで同時に後方筋膜も伸張ストレスから解放されます。

後方筋膜に原因がある場合は、立位で体幹を前屈することで痛みが誘発できるため、そこに原因がないかを検査することも重要です。

しかしながら、実際は冒頭で述べたように「横向きで抱き枕を持ちながら寝る姿勢」が最も楽だと答える場合が多くあります。

この理由として、仰向けでは殿部の後方筋膜が圧迫されるため、腰部の筋膜が伸張ストレスから完全には解放されないことに由来します。

それを最も解決できる姿勢というのが抱き枕を両手と両膝で挟み込んだ状態であり、腰椎は前弯を減少させてフラットに保持します。

さらに膝関節が屈曲しているので下半身の後方筋膜は緩んだ状態となり、より伸張ストレスから逃げることができるというわけです。

では、ここから実際にどのような治療法が必要となるかについてですが、最も重要なのは硬くなっている筋膜をほぐすことです。

腰部後方に痛みを起こす圧痛点

筋膜が硬くなりやすい場所というのは決まっており、上の写真にその位置と治療方法について記載しています。

圧痛点を探すときは周囲をいくつか押していきながら、最も痛みを強く訴える場所を狙ってから施術していくことが大切です。

十分に緩んだことを確認したら、最後に筋膜ストレッチをしていきます。

腰部から殿部の後方筋膜ストレッチ

ストレッチは少なくとも90秒以上(長くて5分間)は持続するようにし、しっかりとリリースしていくことが大切です。

大腰筋に過度な緊張を認める場合には、背臥位にてヘソの外方を深く圧迫し、大腰筋を持続圧迫して緩めていきます。

大腰筋の圧痛点

こちらも緩めたあとはしっかりとストレッチを実施するようにし、在宅練習につなげていくように指導します。

大腰筋のストレッチング1

腰痛の8割は原因不明といわれますが、人体の構造を理解して姿勢をしっかりと評価できたら、問題を特定することは可能です。

とくに筋膜に由来した痛みは姿勢性疼痛と呼ばれるように、普段の姿勢がとても重要な部分になってきます。

そのため、どのような姿勢で痛みが出るか、普段はどんな姿勢で過ごしているかは必ず聴取しておくことが大切です。

筋膜性疼痛は治療効果が出やすい部分なので、是非ともしっかりと勉強してみてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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