体幹をみることができたら臨床が変わる

以前にコンディショニング・ラボの園部先生が「自分の臨床力はここ数年で急激に伸びた」と話されていました。

理由について尋ねたところ、体幹をみれるようになったことが大きいと話されていましたが、その時は具体的なところまで聞く時間がありませんでした。

それから自分なりに体幹をみるようにしていきましたが、ヒトの身体は下部体幹が前方にあるか、または後方にあるかで性質が大きく異なることに気付きました。

両者を簡単に分類するだけで「そのヒトが起こしやすい障害」が理解できるようになり、治療も対症療法ではなく根治療法に持っていくことができるようになると思います。

まずは重要なポイントから書かせてもらうと、下部体幹が後方にあるケースでは、脊柱起立筋群や下腿三頭筋などが硬くなっています。

筋膜の繋がりで書くなら、アナトミー・トレインにおけるSBL(スーパーフィシャル・バック・ライン)がタイトな状態にあります。

足関節背屈や股関節伸展といったモビリティが低下しやすく、下位腰椎が屈曲位となって椎間板内圧が高まりやすくなっています。

起こしやすい腰部障害を例に挙げるなら、筋・筋膜性腰痛(脊柱起立筋群)、椎間板ヘルニア、腰椎圧迫骨折、仙腸関節障害(多裂筋表層線維)があります。

次いで下部体幹が前方にあるケースでは、腰方形筋や大腰筋、股関節内転筋群などが硬くなっています。

筋膜の繋がりで書くなら、アナトミー・トレインにおけるDFL(ディープ・フロント・ライン)がタイトな状態にあります。

胸椎伸展のモビリティが低下しやすく、下位腰椎は伸展位となって剪断力が増加し、椎間板変性をきたしやすいです

起こしやすい腰部障害を例に挙げるなら、筋・筋膜性腰痛(腰方形筋)、椎間板症(変性すべり症)、腰部脊柱管狭窄症、椎間関節障害(多裂筋深層線維)があります。

ここまでを理解できるようになると腰痛の原因がわかるようになるので、予防としてどんな運動を指導すべきかが見えてくるはずです。

今回は腰部障害を例にしましたが、下部体幹の位置で起こりやすい膝痛や肩痛の種類も異なるので、体幹をみるだけで予測できることは非常に多いです。

自分もまだまだ臨床をしながらデータを集めてる段階であり、そういった傾向があることを加味して、実際にどのような治療法が本当に効果的なのかを模索している状態にあります。

体幹をみれるようになると障害を治せるとは言えませんが、障害の発生リスクが予測でき、多くの障害を未然に防げる可能性が出てきます。

なので、まずは下部体幹の位置がどこにあるかをチェックし、ここで書いた筋肉の硬さを確認するようにしてみてください。


他の記事も読んでみる

The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
rehatora.net © 2016 Frontier Theme