体幹後屈時に腰痛が起こる原因

体幹を後屈した際に、腰痛が起こる原因について解説していきます。

筋筋膜の硬結

アナトミートレイン:筋膜:DFL

体幹後屈時の腰痛において、最も重要な筋膜がDFL(ディープ・フロント・ライン)になります。

この筋膜の路線のどこかに問題(硬結)が生じると、腰部や股関節に痛みとして問題を起こします。

とくに重要なのが大腰筋と腰方形筋であり、これらの筋肉は短縮しやすく、腰痛患者では圧痛を認めることが多いです。

問題部位には必ず関連痛が出現し、例えば、大腰筋を押圧することで腰痛を再現することができます。

治療では硬くなった筋膜を緩めることが大切で、そのためには硬結部位を探してリリースすることが必要になります。

大腰筋の拘縮

大腰筋の起始停止

大腰筋は股関節屈曲角度で作用が異なり、0〜15度は脊椎の安定化、15〜45度は直立姿勢の保持、45-60度は股関節の屈曲運動に貢献します。

腸腰筋の拘縮は、股関節の伸展制限と骨盤の後傾制限を起こします。

そのため、隣接関節である腰椎に過剰な可動性が求められることになり、椎間関節障害を生じる原因となります。

腰方形筋の拘縮

腰方形筋の起始停止

腰方形筋は両側が収縮することで腰椎の伸展に作用しますが、DFLに属することから身体の伸展系を制限する役割を担います。

そのため、腰痛患者で体幹伸展時に痛みが強いケースでは、しばしば腰方形筋の滑走障害が生じています。

恥骨筋の拘縮

恥骨筋の起始停止2

恥骨筋は股関節屈曲・内転・内旋に作用し、DFLに属することから身体の伸展系を制限する役割を担います。

恥骨筋以外にも内転筋群(長内転筋・短内転筋・大内転筋)が関与しているため、変形性股関節症の外転制限にも影響を与えます。

腹直筋の弱化

腹直筋の起始停止

腹筋群(腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋)の弱化は腰椎の前彎を強めて、椎間関節の負担を増加させます。

椎間関節障害

椎間関節障害2

股関節周囲の筋肉に拘縮が存在していると腰椎の過剰な伸展運動が生じてしまい、その動きを受け止める椎間関節の負担が増加します。

また、L5/S椎間関節は拘縮が発生しやすいために、隣接関節であるL4/5椎間関節の負担が特に増加する傾向にあります。

そのため、椎間関節障害の好発部位はL5であり、衝撃が加わり続けると腰椎分離症に発展していくことにつながります。

腰椎分離症

腰椎分離症2

椎間関節への過剰な負担が椎間関節障害をきたすことは前述しましたが、スポーツ習慣のある若年者では分離症に発展することもあります。

腰椎分離症を発症するヒトのほとんどは12〜17歳の若年者であり、女性よりも男性に多く発生することが特徴です。

その理由としては股関節の硬さに加えて、激しい運動をしていることが強く影響していると推察されます。

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症2

脊柱管狭窄症とは、脊髄の通り道である脊柱管(椎孔の連続)に狭窄が生じ、中を通過している脊髄や馬尾に圧迫をきたしている状態を指します。

症状は神経や血管が圧迫されることで起こり、腰痛や下肢痛、しびれ、脱力感など様々な訴えがあります。

狭窄をきたす原因としては、骨性狭窄(脊椎すべり症や脊柱側彎症)、椎間板膨隆、椎間関節の骨性肥厚、黄色靭帯の肥厚などがあります。

脊柱管は椎間関節が伸展することで狭小化するため、L5/S椎間関節が拘縮しており、L4/5に負担が存在していると発生しやすいです。

また、腰部多裂筋の持続的筋攣縮例では、椎間関節の過伸展保持を強制されて慢性的な脊柱管狭窄をきたしていることもあります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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