膝内側側副靭帯(MCL)損傷のリハビリ治療

膝の内側側副靱帯(Medial collateral ligament:MCL)損傷のリハビリ治療について解説していきます。

なお、肘にも内側側副靭帯は存在していますが、ここでは全て膝の「MCL」として記載します。

内側側副靱帯の概要

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膝の内側側副靭帯は、「大腿骨の内側上顆」から前方に向かって「脛骨の近位内側面」に付着する帯状の靱帯になります。

膝関節内側を幅広く支持することから、下腿の外反不安定性を強力に制動し、前方不安定性に関しても若干制動する役割を持ちます。

内側側副靱帯の深層繊維は内側半月板とも強く結合するため、内側半月板の安定性にも関与する特殊な靱帯です。

MCL損傷について

膝のMCL単独損傷は、ほとんどの場合が膝関節外側より直接的な外力が加わり、膝が外反位を強制されることで起こります。

間接的な損傷としては、サッカーやバスケットボールなどの急激な方向転換やジャンプの着地動作で発生しやすいです。

その場合は前十字靭帯損傷を合併していることが大半であるため、MCL単独損傷となることは基本的にありません。

受傷後に多量の関節液が貯留している場合は、関節内組織(前・後十字靭帯や半月板)の損傷、骨折などを合併していることが推察されます。

通常、膝MCLは関節外に位置するため、単独損傷では関節液が多量に貯留することはないことに留意してください。

膝MCLが損傷しやすい部位

ほとんどの損傷は起始部(大腿骨側)か中心部(靱帯実質部)に発生し、停止部(脛骨側)に起こることはほとんどありません。

脛骨側に圧痛が認められる場合は、その表層に位置する鵞足炎の可能性が高いです。

MCLが損傷している場合は、膝伸展位(または30度屈曲位)で徒手的に外反ストレスを加えることで、膝に動揺や疼痛を認めることになります。

膝MCL損傷の重症度分類

Grade 靱帯の損傷 臨床所見
1 延長なし 靱帯の圧痛(+)
30度屈曲位での動揺性(-)
2 部分断裂 伸展位の動揺性(-)
30度屈曲位での動揺性(+)
3 完全断裂 伸展位の動揺性(+)
30度屈曲位での動揺性(+)

Grade3に該当する場合は、膝MCL単独損傷は少なく、膝関節の内側関節包や前十字靭帯の損傷を合併している可能性が高いです。

単独損傷の場合は、どの重症度においても基本的に保存療法が選択されます。

画像検査

レントゲン写真では靱帯が映りませんので、損傷の有無や程度を確認するためにはMRI検査が必要です。

MRI画像では、靱帯実質部や付着部に輝度変化や腫脹がないかを確認していきます。

保存療法と手術療法の選択

MCL単独損傷は保存療法が原則で、Grade1で1〜2週間の固定、Grade2・3で4〜5週間の固定が必要となります。

固定には膝関節の外反動揺を抑えるサポーターやギプスを着用し、疼痛の程度によっては松葉杖などを使用してもらいます。

完全断裂や前十字靱帯などの合併損傷を伴う場合は手術が適応となり、断裂部の縫合修復、またはアンカーを使用した修復術が選択されます。

MCL損傷を起こしやすい姿勢

急激な方向転換やジャンプの着地動作で損傷しやすいことは前述しましたが、その際に問題となりやすい姿勢がニーイン(knee-in)です。

ニーインとは膝が内向きにある状態で、大腿骨内旋の角度が通常より大きく、この姿勢で着地などすると脛骨前方変位が強まります。

それは結果的にACL損傷やMCL損傷、内側半月板損傷などを引き起こすことにつながります。

ニーインしやすいタイプは扁平足(回内足)を呈していることが多く、カイホロードシスやスウェイバックといった不良姿勢となりやすいです。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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