内臓の位置と痛みの場所について図で解説

内蔵の位置と関連痛領域について図を用いてわかりやすく解説していきます。

内蔵の位置を確認する

下記の写真は、ヒトを前面から見た場合の臓器の位置ですが、どの部位がなにかをすぐに答えることはできるでしょうか。

内臓の模型

肺の役割は、呼吸によって酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出すことにあります。

肺の位置

肺の関連痛は、頸部から肩周囲にかけて現れます。稀にですが、肩こりの原因が肺がんである場合もあります。

肺の痛み|関連痛領域

【関連痛はなぜ起こるのか】内臓の痛みは、内臓の壁にある自由神経終末が感知して発しています。この内臓の痛みを、同じ神経路を通過する別の体性感覚と混線することで起こります。

肺に問題がある場合は、第3-4肋間隙、第4-5肋間隙に圧痛点が生じます。

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション|肺

心臓

心臓の役割は、血液を循環させることで様々な物質を必要な場所に届けることです。

心臓の位置

心臓(心筋梗塞)の関連痛は、左胸部から前腕内側にかけて現れます。また、後面では左上背部に痛みが起こる場合もあります。

心臓の痛み|関連痛領域

心臓に問題がある場合は、T2棘突起の左側に圧痛点が生じます。

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション|心臓

肝臓

肝臓の役割は、主に三大栄養素の代謝や、ビタミン、鉄の貯蔵などを行います。その機能は膨大であり、人体の化学工場とも呼ばれます。

肝臓の前面上部は右第5肋間隙から左第6肋間隙にあり、後面下部はT11-12のあたりに位置しています。

肝臓の位置

肝臓の関連痛は、右頸部から肩上面にかけて、後面は右上背部に現れます。肝臓は右側に大きく位置しているので、右側の体性感覚に影響を与えます。

支配神経は、T7-10の大内臓神経と小内臓神経を経由する交感神経系、迷走神経です。肝被膜は横隔神経(C3-5)を介して支配を受けます。

肝臓の痛み|関連痛領域

肝臓に問題がある場合は、右第5-6肋間隙または右第6-7肋間隙に圧痛点が生じています。

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション|肝臓

胃の役割は、摂取した食べ物を消化することと、食べ物と一緒に入ってきた細菌やウイルスを殺菌することです。

食道は後縦隔の位置しており、気道分岐部(T4)までは脊柱の正面内側にありますが、その先は心臓を避けて右側にずれています。

胃の位置はその大きさや姿勢によって著しく変化しますが、立位ではおおむねT8-L1の高さにあります。

胃の位置

胃の関連痛は、前面は鳩尾(みぞおち)に、後面は上背部に現れます。

支配神経は、迷走神経、T6-9の大内臓神経と小内臓神経を経由する交感神経系、その他の交感神経支配路が腹腔神経節と上腸間膜動脈神経節へ走行します。

胃の痛み|関連痛領域

胃に緊張状態がある場合は、左第6-7肋間隙に圧痛点が生じています。

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション|胃

小腸

小腸の役割は、各栄養素が吸収できる段階にまで消化することです。

小腸の位置

小腸の関連痛は、臍周囲に現れます。関連痛というよりは、原因部位に限局して痛みが起こります。

小腸の痛み|関連痛領域

大腸

大腸の役割は、小腸で栄養素の吸収が済んだ残り物から水分を抜きとり、便を形成し、排出することです。

大腸の位置

大腸の関連痛は、下腹部の中心あたりに現れます。小腸よりもやや下方に痛みを感じるのが特徴です。こちらも原因部位に限局します。

大腸の痛み|関連痛領域

大腸に問題がある場合は、腰背部の外側(両側)に圧痛点が出現します。

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション|大腸

虫垂

虫垂の役割は、腸に免疫細胞を供給し腸内細菌のバランスを保つことです。

虫垂の位置

虫垂(炎)の関連痛は、初期症状として右上腹部に現れます。その後、ゆっくりと時間をかけて右下の虫垂に痛みが移動していきます。(12-24時間かけて)

虫垂炎の場合は、その他の症状として発熱や下痢、嘔吐などの症状がみられます。

虫垂の痛み|関連痛領域

膵臓

膵臓の役割は、膵液によって三大栄養素を消化すること、さらには血糖値を調節するホルモンを分泌する機能もあります。

膵臓はやや背中側(胃の裏側あたり)に位置しており、前方からは確認することができません。

下の写真では、肝臓と胃、腸を取り除いた状態にしています。

膵臓の位置

膵臓の関連痛は、鳩尾より若干左側に現れます。

支配神経は、迷走神経、T5-9(ときにT10やT11まで)から出る交感神経系があります。

膵臓の関連痛領域

膵臓に問題がある場合、右側のT7とT8の横突起の間に圧痛点が生じます。

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション|膵臓

胆嚢

胆嚢の役割は、肝臓で作られる胆汁を一時的に貯蔵し、濃縮することです。その後、十二指腸に送られ、膵液と混ざり合って中和します。

胆嚢は腹腔内の肝臓の後方に位置しています。

胆嚢の位置

胆嚢の関連痛は、右上腹部に現れます。虫垂炎と似た領域に痛みを誘発するので、正しい鑑別が必要となります。

支配神経は、T7-10の大内臓神経と小内臓神経を経由する交感神経系、迷走神経、横隔神経知覚枝です。

胆嚢の痛み|関連痛領域

胆嚢に問題がある場合は、右第6-7肋間隙に圧痛点が生じています。位置が肝臓の圧痛点と同じなので、後方から圧迫していきます。

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション|胆嚢

腎臓

腎臓の役割は、尿を作る臓器であり、血中酸素濃度や血圧を調節して、ホメオスタシスを維持に努めます。

腎臓は背中側に位置しており、第12胸椎から第3腰椎の高さに存在します。

下の写真では、肝臓と胃、腸、膵臓を取り除いた状態にしています。

腎臓の位置

腎臓の関連痛は、腹部周囲に現れます。腎臓が背部に位置する臓器であるため、しばしば腰痛の原因となります。

支配神経はT10-L1から出る交感神経系、迷走神経、仙髄副交感神経(S2-4)があります。

腎臓の痛み|関連痛領域

腎臓に問題がある場合は、T12-L1の横突起の間の、棘突起と横突起の先端の中間に圧痛点があります。(両側)

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション|腎臓

内臓の位置まとめ

上述してきた臓器の位置をまとめると、下図のような配置になります。

模型に加えて、CGの画像も掲載しておきますので、二つを見比べながら場所を覚えるようにしてみてください。

内臓の位置|CGf 人体模型|内臓前面

内臓の関連痛領域まとめ

上述してきた臓器の関連痛領域をまとめると、下図のような配置になります。

しかし実際は、ヒトによって臓器の位置が違うように、痛みの訴え方もそれぞれで異なる可能性があります。

なので、あくまでひとつの目安として考えるようにお願いします。

内臓の痛み|前方|関連痛領域

内臓の痛み|後方|関連痛領域

内臓の圧痛点まとめ

図で示してきた内臓の圧痛点は、チャップマンの反射点をもとに作成しています。

反射点とは、内蔵のツボだと考えていただくとわかりやすいです。

圧痛が認められる部位に対しては、軽くマッサージを加えることで交感神経系の緊張を抑えて、痛みがやわらぐ場合があります。

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション②

 

チャップマンの反射点治療|内蔵マニピュレーション③

徒手での内臓治療法を勉強できる一冊

内臓の圧痛点や関連痛について解説してきましたが、徒手的に治療する方法をまとめているのが内臓マニピュレーションです。

理学療法士や作業療法士はあまり内臓疾患の治療にたずさわることはありませんが、知っておくと知識の幅を広げられるのでお勧めの一冊です。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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