この記事では、円回内筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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円回内筋の概要
円回内筋は前腕前面に位置する筋肉で、名前の通りに前腕を回内させる働きと、肘関節の屈曲にも作用します。
上腕頭と尺骨頭の二頭を有しており、その筋間を正中神経が通過しているため、円回内筋の攣縮では正中神経が絞扼される場合もあります。
上腕頭は内側上顆炎(ゴルフ肘)などのオーバーユース障害をきたしやすい部位であり、円回内筋の圧痛が認められやすいです。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 正中神経 |
髄節 | C6-7 |
起始 | ①上腕頭:内側上顆・内側上腕筋間中隔
②尺骨頭:鈎状突起内側 |
停止 | 橈骨外側面の中央部 |
栄養血管 | 尺骨動脈、撓骨動脈 |
動作 | 前腕の回内、肘関節の屈曲 |
筋体積 | 80㎤ |
筋線維長 | 4.5㎝ |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
前腕回内 |
1位 | 円回内筋 |
2位 | 方形回内筋 |
3位 | 橈側手根屈筋 |
円回内筋の触診方法
円回内筋を触診する際は、手関節を掌屈位に保持することが重要になります。
掌屈することで円回内筋の遠位を併走する撓側手根屈筋、長掌筋、尺側手根屈筋のの運動参加を排除することができます。
その状態から肘関節90度屈曲位に保持し、前腕回内運動を行わせることで円回内筋の収縮を触知することができます。
ストレッチ方法
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片手で棒を持ち、もう片方の手で前腕を支えるようにし、棒の重さを利用して前腕を回外させていきます。
筋力トレーニング
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坐位にて机やベッドに前腕を乗せ、前腕は回外した状態で手首より先をベッドの外に出します。
その状態でダンベルを把持し、前腕を回内させていきます。
上腕骨内側上顆に付着している筋肉
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内側上顆に付着する筋肉は、①円回内筋、②橈側手根屈筋、③長掌筋、④尺側手根屈筋、⑤浅指屈筋の五つがあります。
そのため、内側上顆には筋収縮による負荷がかかりやすく、それが持続することによって炎症が起こる場合があります。
円回内筋以外は肘関節や前腕のみに作用しますが、②③④は手関節掌屈にも作用しますので、掌屈時に痛みを生じます。
⑤のみは手指の屈曲動作に作用しますので、浅指屈筋に問題がある場合は、指を曲げた際に痛みを生じます。
痛みはあくまで目安であり、内側上顆に炎症があると付着筋すべてに影響が出るため、治療には各筋肉の動きを制限することが必要となります。
トリガーポイントと関連痛領域
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円回内筋にトリガーポイントが出現すると、前腕掌側〜手関節橈側にかけて痛みが放散します。
手関節橈側に疼痛が起こる理由として、円回内筋は撓側手根屈筋と隣り合っているため、深筋膜を通じて波及しているものと考えられます。
関連する疾患
- 円回内筋症候群(正中神経高位麻痺)
- 内側型投球障害肘
- 肘関節屈曲拘縮 etc.
円回内筋症候群
正中神経は前腕部にて円回内筋の上腕頭と尺骨頭の間を通過しているため、円回内筋に過度な緊張があると正中神経を圧迫します。
そこで正中神経麻痺が起こった状態を円回内筋症候群と呼んでおり,障害部以下の麻痺が起きるため、前骨間神経や反回枝まで障害は及びます。
仕事やスポーツなどで同じ動作を繰り返し行っている患者では、上腕二頭筋腱膜の肥厚や円回内筋に炎症が起きている場合があります。
臨床症状としては、前駆症状として肘から前腕の疼痛が起こり、その後に運動麻痺が生じ、母指IP関節と示指DIP関節の屈曲が障害されます。