加齢や運動不足で衰えやすい筋肉と衰えにくい筋肉

筋肉は加齢や運動不足に伴って委縮していきますが、その中でも衰えやすい筋肉と保たれやすい筋肉があります。

ここではそれらの筋肉について解説していきます。

抗重力筋は衰えやすい

一般的に運動不足などで衰えやすいとされる筋肉は抗重力筋です。

抗重力筋は姿勢保持筋とも呼ばれ、主に立位姿勢を保つために使用される筋肉を指します。

動いている間は常に使用され続けていますが、それが寝たきりなどになると急激に使用されなくなるため、委縮もすぐに起きる傾向にあります。

それに対して、普段からあまり使われていないような筋肉は寝たきりになったからといって、そう簡単に落ちるといったことはありません。

具体的には、腹筋群、脊柱起立筋、大腰筋、大殿筋、大腿四頭筋、前脛骨筋、下腿三頭筋などが抗重力筋になります。

衰えやすい筋肉一覧

基本的には、衰えやすい筋肉と衰えにくい筋肉は拮抗筋になる場合が多いので、以下の表に衰えにくい筋肉も対比するように掲載します。

衰えやすい筋肉 衰えにくい筋肉
僧帽筋 胸鎖乳突筋
広背筋 大胸筋
上腕三頭筋 上腕二頭筋
脊柱起立筋群 腹筋群
大腰筋
大殿筋 腸骨筋
中殿筋 内転筋群
大腿四頭筋 ハムストリングス
下腿三頭筋 前脛骨筋

表を見ていただくとわかりやすいですが、衰えやすい傾向にある筋肉のほとんどは伸筋群に属しています。

僧帽筋は頚椎伸展に作用しますし、広背筋は肩関節の伸展筋です。

大腰筋に関しては股関節屈曲に働きますが、腰椎を伸展位に保持する筋肉でもあります。

中殿筋は股関節の屈曲にも伸展にも作用しますが、歩行時には身体を正中位に保持するために重要な役割を果たす筋肉です。

そのため、臥床傾向となって歩く機会がなくなると急激に衰えてしまい、異常歩行をきたす原因になりやすいです。

老人の姿勢と弱った筋肉

加齢で衰えやすい筋肉と老人姿勢

足腰の曲がった老人の姿勢を思い浮かべるとわかりやすいですが、衰えた筋肉は伸張位に、保たれやすい筋肉は短縮位にあります。

高齢者に特徴的な姿勢というのは、結局は衰えやすい筋肉が加齢で弱った状態だということです。

このことを踏まえると、若者のように足腰の伸びた綺麗な姿勢を保つためには、衰えやすい筋肉を中心に鍛えたらいいというわけです。

筋肉を鍛えるときの注意点について

衰えやすい筋肉を知っておくことで、術後などで安静が必要となっている患者に対して効率よく廃用予防の筋力トレーニングができるようになります。

臥床期間が長い場合は足関節が底屈した状態で固まってしまう可能性もあるため、背屈運動も十分に実施する必要があります。

短縮する理由としては、下腿三頭筋の中でも腓腹筋は膝関節が屈曲することで短縮位になることが挙げられます。

下腿三頭筋と一口に言っても、腓腹筋とヒラメ筋で衰えやすさは異なりますので、それぞれの走行については理解しておくことが必要です。

これは腸腰筋も同様で、大腰筋は衰えやすいのに対して、腸骨筋は衰えにくいため、両者をひとつの筋肉として考えるのはやめたほうがよいでしょう。

若返り効果のある筋肉

筋肉は人体の中で最も確実で効果的に若返ることができる器官といわれており、100歳になっても筋肉を強く太くすることができます。

先ほどの抗重力筋はとくに姿勢に関与するため、しっかり鍛えておくことで綺麗な姿勢を保つことができ、いつまでも若々しく生活することができます。

私が住んでいる地域は陸上自衛隊の基地があるので、元自衛官という方々がよく来院されてきます。

その人たちは70歳を過ぎても背筋がまっすぐと伸びており、同年代の人たちよりも10歳以上は若くみえます。

いつまでも若い身体を維持するためには、筋力トレーニングがなによりも効果的であることは間違いありません。

とくに前述した衰えやすい筋肉を中心に鍛えることで、いつまでも若々しい肉体を手に入れてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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