医療保険の疾患別リハビリテーション(脳血管、運動器疾患、廃用症候群)と介護保険のリハビリテーション(通所リハビリと訪問リハビリ)は併用できません。
これは要支援者も要介護者も同様であり、例えば、介護予防通所リハビリテーションを利用しながらの外来リハビリの適用は認められません。
ただし、これにはふたつの例外が存在しており、その場合に限り、同一疾患であっても医療保険と介護保険のリハビリ併用が認められています。
まずひとつめが、目標設定等支援・管理料を算定してから3月以内なら、1月に5日を超えない範囲で併用が可能といった例外です。
これは医療保険のリハビリから介護保険のリハビリにスムーズに移行するために設けられた内容になります。
そしてもうひとつが、言語療法(ST)の場合に限り、医療保険と介護保険の併用が認められています。
これは介護保険の現場で言語聴覚士が十分に配置されていない現状を考慮し、STのみは例外として扱われることに由来しています。
ただし、こちらはあくまで現場環境を理由にした例外であるので、介護保険のみで完結できる環境であるなら、そちらを優先的に利用すべきでしょう。
これら二つの例外は、患者に不利益が被らないように調整された結果ですが、実際の現場ではうまく働いていないケースが多々あります。
先日も、外来リハビリに要支援1で介護予防通所リハビリを週1回利用している患者が来院されましたが、介護保険を利用しているということで外来リハビリは断らざるを得ませんでした。
その方の症状を考えると、最低でも週2回以上は個別リハビリを受けたほうがいいと考えられましたが、話を聞いてみると通所ではほとんどリハビリ職との接点もないような状態でした。
要支援者は以前より個別リハビリの算定がなかったので、多くの現場であまり深くは介入しないという現状があったように思います。
その結果がこのような状態を招いていると考えられるため、通所リハビリと通所介護の違いも考えずに、安易に「近いから」「知っているから」という理由だけで選ぶのは考えものです。
最後に、今回のケースではどのような対応が望ましいかを書くなら、①担当ケアマネに連絡する、②訪問リハビリの利用を検討する、といったことが挙げられます。
とりあえずケアマネに報告しておけば、そこから利用している通所リハビリに連絡が入り、個別に対応するように忠告が入るはずです。
また、より多くの介入が必要となるケースでは、正しく患者の状態を伝えることで訪問リハビリの利用についても検討がなされ、患者への不利益を防ぐことができるようになります。
ちなみにですが、介護保険の訪問リハビリと通所リハビリは併用が可能です。
病院だから医療保険の知識だけでいい、介護事業所だから介護保険の知識だけでいいといったことはなく、どちらの知識も持っていないとその患者に対する最良の答えを導き出すことはできません。
普段関わっていない分野のことを勉強するのは非常に大変ですが、ひとつ上の治療家を目指すためにも是非とも勉強しておいて損はないかと思います。