膝関節障害としても多い内側半月板損傷(Medial meniscus damage)のリハビリ治療について解説していきます。
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内側半月板損傷の概要
大腿骨と脛骨の間隙に位置する板状の線維性軟骨のことを半月板と呼んでおり、内側半月板と外側半月板のふたつが存在しています。
半月板損傷は1回の大きな外力によって生じる損傷(断裂)と、頻繁に膝関節に加わる外力によって生じる損傷(変性)があります。
前者は若年者のスポーツ経験者に多く、後者は中高年以降に多くなります。
日本人の60歳以上では膝関節に痛みが存在しなくても 、その約40%にMRI上で内側半月板後節の損傷が存在するとされています。
そのため、リハビリ病名に「内側半月板損傷」と書かれていても、中高年ではそのほとんどが半月板と膝痛に関係を認めないことに留意してください。
内側半月板損傷の受傷機転
内側半月板にストレスをかけやすい姿勢として、内反膝(O脚)や下腿外旋位が挙げられます。
内反膝を引き起こす原因として、①膝関節内反位荷重、②骨盤外方位、③COM(質量中心)外方位、④COP(足底中心)外方位があります。
内反膝では膝関節内側に荷重が集中するため、内側半月板の負担が増加することにつながります。
次いで下腿外旋位ですが、膝が悪いヒトの多くに下腿外旋位(下腿外旋症候群)がみられます。
正常の膝関節では、伸展するときは下腿が外旋していき、屈曲するときは下腿が内旋するようにできています。
しかし、下腿が過剰に外旋しているケースでは、深屈曲時に下腿の内旋が不十分となり、内側半月板後節が挟み込まれる形となります。
若年のスポーツ外傷の場合は、内側半月板の単独損傷よりも、前十字靱帯や内側側副靱帯を合併損傷している割合のほうが多いです。
断裂の状態によっては、①ロッキング、②引っかかり感、③弾発現象(クリック音)、④膝崩れなどが起こります。
高齢者の半月板損傷は明確な受傷機転がない場合が多く、慢性的な機械刺激が加わって徐々に変性損傷が進行していきます。
高齢者の変性損傷は断裂面が不整のために縫合することは困難であり、手術では不整な部分を切除して整備することになります。
しかし、前述したように半月板は膝痛と関係ないことが多く、術後に痛みが改善しないケースを臨床でもよく目にします。
手術では膝蓋下脂肪体を侵襲してから行うため、膝蓋下脂肪体が痛みの主因だった場合は術後に痛みが悪化することも多々あります。
半月板について理解する
膝関節内に半月板が存在する理由として、①緩衝機能、②荷重の均等化、③関節の安定化、④関節潤滑、⑤関節軟骨の栄養補給の役割があります。
他の関節では関節軟骨のみしか存在していないのに対して、膝関節ではもう一枚の軟骨を介在させ、関節が摩耗しないように二重の対策をとっています。
若年者でも半月板が損傷してしまうと、10年以内に30〜50%で変形性膝関節症を起こすと報告されており、その存在意義は非常に高いです。
半月板は軟骨なので神経(痛覚受容器)は存在しませんが、辺縁部のみは滑膜由来の血管や神経を含んでいます。
そのため、半月板の辺縁部の損傷は痛みの原因となる可能性があります。
内側半月板と外側半月板の違い
内側半月板 | 外側半月板 | |
形状 | C型 | O型 |
移動距離 | 6㎜ | 12㎜ |
側副靭帯 | 結合あり | 結合なし |
損傷頻度 | 多い(約5倍) | 少ない |
栄養血管 | 関節液 | 関節液 |
半月板は前節・中節・後節に分けられ、内側半月板では前節ほど小さく(幅8㎜:厚さ3㎜)、後節ほど大きい(幅15㎜:厚さ4.5㎜)です。
徒手検査の種類と方法
半月板損傷の存在を徒手的に確認する方法として、以下の2つのテストが主に用いられます。
McMurray test
- 膝屈曲位で下腿を外旋位に保持した状態で膝関節を伸展していく。痛みやクリック音が発生したら内側半月板損傷を疑う。
- 感度:70%、特異度:71%
圧痛テスト
- 内側関節裂隙を母指にて圧迫して痛みが誘発したら内側半月板損傷を疑う。前部・中部・後部と圧迫を加えることで各節の状態を調べる。
- 感度:63%、特異度:77%
半月板由来の膝痛を鑑別する
上記の徒手検査を行う以外にも、どのような状況で痛みが誘発されるかを確認することが鑑別には有用です。
簡単な見分け方として、歩く時(荷重時)に痛いなら大腿脛骨関節、立ち上がる時に痛いなら膝蓋大腿関節の痛みである可能性が高いです。
大腿脛骨関節における疼痛誘発組織は滑膜と半月板であり、痛みは膝関節に炎症が存在している場合に強く起こります。
膝蓋大腿関節における疼痛誘発組織は膝蓋下脂肪体であり、脂肪体の滑走が障害され、摩擦やインピンジメントが起きることで発生します。
半月板亜脱臼に伴う膝痛
膝関節に変形や不安定性が生じると半月板が亜脱臼を起こし、荷重時に亜脱臼の程度が増加して膝の痛みを引き起こします。
臨床で遭遇しやすいのは半月板の後内方への亜脱臼で、膝関節の屈曲拘縮や下腿の過外旋による影響が大きいです。
半月板の亜脱臼に対しては、サポーターで外側から圧迫することにより亜脱臼の程度を軽減させる方法が有用です。
半月板損傷の画像検査
半月板は単純X線写真(レントゲン)には写らないため、損傷の有無や程度の確認にはMRI撮影が必要となります。
上の写真では、白丸で囲んでいる部分に見える黒い三角形が半月板で、白っぽい線が横切っているのが見てとれます。
その線が半月板の断裂像であるため、水平に横切りながら完全に断裂していることがわかります。
手術療法の適応と影響
半月板損傷の手術には、主に「切除術」と「縫合術」があります。
縦断裂などの縫合しやすい損傷の場合、または血行支配領域で治癒が望める場合は縫合術が選択されます。
変性損傷などの断裂面が不整な場合や血行がない部位で治癒が望めない場合は、切除術によって変性部位の整備を行います。
前述したように半月板を切除すると膝関節の変形を加速させてしまうため、手術では半月板をなるべく温存するための方法を検討します。
全切除を実施した場合は、部分切除よりも明らかに変形性膝関節症を発生させるリスクが高まることが報告されています。
切除後の問題として、関節の動揺性、荷重の限局化、関節軟骨の栄養不良による変性加速といった問題があります。
リハビリテーション
内側半月板損傷は内反膝や下腿外旋位(ニーイン・トーアウト)で起こりやすいため、それらの原因を修正していくことが必要です。
歩行時に膝関節が外方動揺(ラテラルスラスト)するケースでは、O脚変形していきやすいので修正が必要となります。
具体的には、膝関節伸展制限を改善させて膝をロックできるようにし、弱化しやすい内側広筋や股関節内転筋群を強化していきます。
サポーターを使用するなどして動揺を抑えることも有用であり、状態に応じて購入を検討してもらいます。
骨盤外方位となるケースでは、中殿筋や大殿筋の弱化が考えられるので、骨盤を正中に保つように意識させた片脚立位練習を行っていきます。
下腿外旋位に対しては、上記のような修正テーピングが有効であり、実施後に歩いてもらうことで痛みが変化するかをみていきます。
それで疼痛が軽減するようなら膝関節の捻れが痛みの原因である可能性が高いので、アライメントの崩れを矯正するように誘導します。
具体的には、腸脛靭帯や外側広筋、外側ハムストリングスなどの下腿を外旋させる筋群を中心にリリースしていきます。