呼吸器疾患の胸部診察方法(視診・聴診・打診・触診など)

胸部診察の方法について記述していきます。

胸部観察のポイント

胸部を観察するポイントとして、鎖骨内側上3㎝(肺尖部・上葉先端)、剣状突起(肺前部下端・中葉下端)、第8肋骨と中腋窩線の交点(肺足部の下端・下葉下端)をチェックします。

背部からは、第7頸椎棘突起(肺尖部)、第2胸椎棘突起(上葉下葉の境界)、第10胸椎棘突起(肺後部下端)をチェックします。

胸部診察の方法

呼吸の状態と型

正常 安静時 呼吸数 12-18回/分
呼吸の深さ 1回換気量が約500ml
数と深さの変化 頻呼吸 呼吸数 25回/分以上
呼吸の深さ 正常
徐呼吸 呼吸数 12回/分以下
呼吸の深さ 正常
多呼吸 呼吸数 増加
呼吸の深さ 増加
少呼吸 呼吸数 減少
呼吸の深さ 減少
過呼吸 呼吸数 正常
呼吸の深さ 増加
減呼吸 呼吸数 正常
呼吸の深さ 減少
無呼吸 呼吸数 一時停止
呼吸の深さ 一時停止
リズム異常 クスマウル呼吸 呼吸数 減少
呼吸の深さ 増加
備考 PaCO2を低下してアシドーシスを補正
チェーン・ストロークス呼吸 呼吸数 周期的に変化
呼吸の深さ 周期的に変化
備考 数秒から数十秒の無呼吸→過呼吸→減呼吸→無呼吸を繰り返す
ビオー呼吸 呼吸数 周期的に変化
呼吸の深さ 周期的に変化
備考 無呼吸→不規則に速く深い呼吸→無呼吸を繰り返す

呼吸リハビリにおける視診

呼吸の動きをみる部位
①口元 吸気時に鼻が膨らむ鼻翼呼吸、吸気時に顎が上がる下顎呼吸の有無
②肩部 吸気時に肩が上がる肩呼吸の有無
③胸部 腹部と比較して、胸骨及び胸郭の運動が優位なら胸式呼吸に分類する
④胸郭上部 胸郭の動きで深度を観察、上部胸郭の局所的な換気不全の有無
⑤胸郭下部 胸郭の動きで深度を観察、下部胸郭の局所的な換気不全の有無
⑥腹部 胸骨及び胸郭と比較して、腹部運動が優位なら腹式呼吸に分類する

呼吸補助筋の観察

僧帽筋  僧帽筋
  •  努力性呼吸時は、吸気時に収縮する
後斜角筋  斜角筋
  • 努力性呼吸時は、吸気時に収縮する
胸鎖乳突筋  胸鎖乳突筋
  • 努力性呼吸時は、吸気時に収縮する
大胸筋  大胸筋
  • 努力性呼吸時は、吸気時に収縮する
外腹斜筋  腹斜筋、腹直筋
  • 努力性呼吸時は、呼気時に収縮する

※呼吸補助筋として活動している場合、筋疲労のために筋肉が硬くなっており、強い圧痛がみられます。

胸部打診の方法

打診方法として、非利き手の中指全体を胸郭の測定部位に置き、皮膚が少しへこむ程度に圧をかけます。

その上から、利き手の指尖で非利き手の中節から末節の間を叩きます。下記の写真が肺野の打診部位になります。

 腹側 背側 
胸部打診の部位と方法 胸部打診の部位と方法2

打診音の種類と特徴

種類 特徴
清音 含気量 適切
備考 正常な肺野を打診した音
過共鳴音 含気量 多い
備考 深呼吸をした正常な肺野を打診した音。清音よりやや響く
濁音 含気量 少ない
備考 炎症部位、液体の貯留、胸膜肥厚時に聞こえる。響かない詰まった音
鼓音 含気量 とても多い
備考 空洞、気胸、嚢胞変化時に聞こえる。よく響く低い音

胸部聴診の方法

呼吸音は、健常人でも聞こえる正常呼吸音と健常では聞かれない副雑音に分けられます。正常呼吸音は、さらに気管呼吸音、肺胞呼吸音、気管支呼吸音の3つに分類でき、呼吸音が異なるので聞き分ける必要があります。

 腹側 背側 
胸部聴診の部位と方法 胸部聴診の部位と方法2

 呼吸音の分類

3つの正常呼吸音は、以下の図の部位で聞き分けることができます。黄色の部分が気管呼吸音、青色の部分が気管支呼吸音、赤色の部分が肺胞呼吸音となります。

 腹側 背側 
呼吸音の分類と方法 呼吸音の分類と方法2

 複雑音の分類

種類 出現 原因
連続性ラ音 鼾音 吸気・呼気 グーグー 中枢気道の狭窄、COPD、気管支拡張症
笛音 呼気 ピーピー 末梢気管の狭窄、気管支喘息
断続性ラ音 捻髪音 吸気後半 バリバリ 肺底部で聴取、虚脱した肺胞が急激に開くときの音、間質性肺炎、肺炎の初期、うっ血性心不全
水泡音 吸気・呼気 ブツブツ 中枢気道の貯留分泌物の膜が破裂した音、ARDS、肺炎、気道内分泌物

聴診器の種類と構造

膜型・ベル型兼用の聴診器

一般的に用いられる膜型とベル型兼用の聴診器です。チェストピースに入っている管を回すことにより、切り替えることが可能です。

ベル型は低音成分の聴取に優れており、主に心音の聴診に使用されます。膜型は高音成分の聴取に優れており、肺音、心音、血圧の聴診に使用されます。

膜型のみの聴診器

主に血圧測定時に使用され、肺の聴診には適していません。水銀血圧計で測定する場合は、膜型のみの聴診器が使用されます。

膜型は皮膚に少し押し付けて圧迫する必要があり、ベル型は反対に軽く皮膚にのせる程度で聴診します。

電子聴診器

電子聴診器の特徴として、標準の聴診器で聞き取れる音を何十倍にも増幅する機能を持っており、さらに周囲の騒音を80%以上も低減する効果を持っています。

そのため、騒がしい環境下でも正確な生体音聴診が可能となります。また、録音機能やリアルタイムにパソコンへ通信する機能なども持っている優れモノです。

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参考資料/引用画像

  • 筋肉.guide

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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