結論から書くと、軽度から中等度までの変形性膝関節症に対しては装具療法が有効であり、疼痛緩和と転倒予防に役立ちます。
これは診療ガイドラインにも記載されており、推奨度B(行うよう勧められる)としてのエビデンスを獲得しています。
では、なぜ中等度以下の変形性膝関節症には有効で、重度の変形性膝関節症には無効なのでしょうか。
ここを理解するためには、両者の違いについて理解しておく必要があります。
軽度の変形性膝関節症は歩行時などに前後の動揺性が増大しますが、これが重度の場合は反対に減少します。
理由として、軟骨が磨耗し始める初期は関節腔が狭小化して周囲の靭帯などが弛緩し、関節の動揺が増します、
それがさらに進行すると動揺を防ぐために骨棘が形成されたり、周囲組織が拘縮して徐々に動きを制限していきます。
半月板や十字靱帯を損傷した患者が変形性膝関節症に移行しやすいのも、関節の動揺性が深く関与しています。
前後方向の動揺を防ぐためには、脛骨の前方引き出しを制限するサポーターが必要となるため、以下のタイプがお薦めです。
重度の場合は装具(サポーター)のみでは痛みを緩和できないので、杖などの補助具による免荷を図るほうが効果的です。
どれだけ骨が変形していても、関節面の骨には神経が存在しないため、関節を安定させることで疼痛はやわらげられます。
そのことを念頭に置きながら、患者に必要なリハビリテーションを選択していくようにお願い致します。