この記事では、大円筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
大円筋の概要
大円筋は肩甲骨の外側縁・下角から起始し、上腕骨の小結節稜に停止している肩関節伸展の主力筋になります。
小円筋と名前は似ていますが支配神経も作用も異なっており(小円筋は外旋運動)、作用は広背筋と非常に似ています。
大円筋の作用は、2nd(肩関節屈曲90度)では内旋・伸展、3rd(肩関節外転90度)では内旋・内転に働きます。
1st(下垂位)では弛緩しているために筋出力を発揮できず、運動への貢献度は高くありません。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 肩甲下神経 |
髄節 | C6-7 |
起始 | 肩甲骨の外側縁・下角 |
停止 | 上腕骨の小結節稜 |
栄養血管 | 肩甲下動脈、肩甲回旋動脈 |
動作 | 肩関節屈曲90度)肩関節の内旋・伸展
肩関節外転90度)肩関節の内旋・内転 |
筋体積 | 231㎤ |
筋線維長 | 14.8㎝ |
筋連結 | 棘下筋、小円筋、広背筋 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
肩関節伸展 |
肩関節内転 |
肩関節内旋 |
1位 | 広背筋 | 広背筋 | 肩甲下筋 |
2位 | 大円筋 | 大胸筋(下部) | 大胸筋 |
3位 | 三角筋(後部) | 大円筋 | 広背筋 |
4位 | 上腕三頭筋(長頭) | 上腕三頭筋(長頭) | 大円筋 |
※大円筋は主に広背筋の補助として働きます。
大円筋の触診方法
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写真では、2ndポジション(肩関節90度屈曲位)での内旋運動にて、大円筋の収縮を起始部にて触診しています。
大円筋は丸いコロコロとした筋肉であり、肩関節周囲炎(五十肩)では全周性に圧痛を認める場合が多いです。
上部を走行する小円筋との筋間中隔を捉えるには、肩関節の内旋運動と外旋運動を交互に反復するとわかりやすいです。
大円筋と広背筋は途中まで筋間が触知できますが、広背筋が腱へと移行するあたりから2つの筋は癒合して共同腱になります。
ストレッチ方法
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手を頭の後ろに回して、反対側の手で手首を持ち、頸椎を伸展して前腕を後方へ押すことにより、肩関節屈曲をさらに増大させます。
その際に、体幹を伸展しないように注意することにより、大円筋をよりストレッチングしていくことができます。
筋力トレーニング
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長坐位にて足裏にチューブを引っかけ、胸を張りながらチューブを体に引き寄せていき、肩関節の伸展運動を行います。
大円筋は肩関節屈曲位で働くため、なるべく手を伸ばした位置で開始することにより効果的に鍛えることができます。
関連する疾患
- 肩関節周囲炎
- 投球障害肩
- 肩甲下神経麻痺
- 腋窩神経麻痺 etc.
肩関節周囲炎
肩関節周囲炎では大円筋の圧痛、攣縮ともに強い場合が多く、肩関節屈曲や外旋の可動域制限を起こす原因となります。
そのため、凍結完成期においては大円筋や広背筋をマッサージにてほぐすことにより、即時に屈曲域が伸びることも多くみられます。
腋窩神経麻痺
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腋窩神経や後上腕回旋動脈・静脈の通り道である四角間隙の下縁を構成しており、問題が生じると腋窩神経に麻痺が起こる場合があります。
腋窩神経は肩関節外側に痛みなどの知覚異常を起こすことになるため、関連痛以外にも神経の影響が関与している可能性があります。
四角間隙は外側腋窩隙とも呼ばれており、その内側には大円筋・小円筋・上腕三頭筋長頭により形成される内側腋窩隙も存在します。
こちらは肩甲回旋動脈・静脈が通過しており、その後に棘下窩に至って棘下筋に栄養を与えています。