大腰筋は脊柱と下肢をつなげる唯一の筋肉であり、舌に次いで最も感度が高く、その重要性から筋肉界のスーパースターとも呼ばれたりします。
そんな謎多き筋肉ですが、臨床においても本当に重要なのでしょうか。
個人的見解を書かせてもらうなら、筋・筋膜性疼痛の多くに大腰筋は関与しており、その硬さや圧痛については確認すべきです。
触診の方法としては、背臥位にて膝関節を屈曲してもらい、できる限りに表層の腹筋層を緩めます。
施術者は腹直筋の外側から指先を当てて、非常に柔らかいタッチで深部内側に向けて優しく沈めていきます。
イメージ的には、上図のように大腰筋の圧痛が生じやすい場所を押圧するようにし、硬さや痛みがないかをチェックします。
大腰筋に触れることができているかを確認するためには、患者に脚をわずかだけ屈伸してもらい、収縮が触知できるかをみます。
最初に「大腰筋は非常に感度が高い」と書きましたが、筋肉の感度が高い状態というのは、筋・筋膜がツッパっている状態と同じです。
硬くなっている筋肉を揉むと「痛いけど気持ちいい」と言われるのも、筋肉の感度が高まっているからです。
ツッパっている筋膜を押すと「激痛」や「こそばゆい」と訴えることが多いですが、こちらも同様に感度が影響しています。
大腰筋が属する筋膜ライン(DFL:ディープ・フロント・ライン)は、臨床的に最も障害を起こしやすい場所になります。
DFL上に滑走不全が存在すると、膝関節内側痛やシンスプリント、筋・筋膜性腰痛などが生じやすいです。
先日に担当した高校生では、下腿内側の痛み(シンスプリント)が主訴でしたが、最も圧痛が強いのは腸腰筋でした。
一ヶ月ほどで症状は完全に消失しましたが、その時には腸腰筋の圧痛は全くなく、DFLの滑走性も改善されていました。
臨床的にこのようなケースは非常に多く、大腰筋の圧痛がみられるときは腰痛などの症状を強く訴えられることが多々あります。
話を戻しますが、大腰筋は感度の高い筋肉というよりは、感度が高くなりやすい筋肉であるといえます。
そのため、筋・筋膜性疼痛に関与しやすい筋肉でもあり、臨床的に硬さをチェックしておくことは有用となるわけです。
明日からすぐに試せるので、是非ともチェックしてみてください。