この記事では、大腿直筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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大腿直筋の概要
大腿直筋は大腿四頭筋の中で唯一の二関節筋であり、膝関節伸展ならびに股関節屈曲に作用します。
同時に作用すると下肢伸展挙上運動(SLR)となり、広筋群と比較して瞬発的な動きへの貢献度が高くなっています。
立位などで下肢が固定された状態においては、骨盤を前傾させる方向に働くため、腰椎前弯が強い場合は腸腰筋だけでなく大腿直筋の短縮も考慮します。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 大腿神経 |
髄節 | L2-4 |
起始 | 腸骨の下前腸骨棘、寛骨臼の上縁 |
停止 | ①膝蓋骨の上縁
②膝蓋腱を介して脛骨粗面に付着 |
栄養血管 | 大腿動脈 |
動作 | 膝関節の伸展、股関節の屈曲 |
筋体積 | 238㎤ |
筋線維長 | 5.5㎝ |
速筋:遅筋(%) | 61.9:38.1 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
膝関節伸展 |
股関節屈曲 |
1位 | 中間広筋 | 大腰筋 |
2位 | 外側広筋 | 腸骨筋 |
3位 | 内側広筋 | 大腿直筋 |
4位 | 大腿直筋 | 大腿筋膜張筋 |
大腿直筋の触診方法
下肢を伸展挙上させることで大腿直筋を収縮させ、起始部の下前腸骨棘の下方あたりで筋緊張を触知しています。
ストレッチ方法
長坐位にて片脚を曲げて、殿部の下に入れた状態から体幹を後方に倒して、背臥位になっていきます。
大腿直筋は大腿骨上を真っ直ぐに走行している二関節筋であるため、大腿の内外転や回旋、骨盤の前傾などが入らないようにして注意します。
筋力トレーニング
仰向けで片膝を立てて、もう片方の脚は伸ばした状態で地面から15-30㎝ほど挙上させて10秒保持します。
大腿の断面図
大腿中央を断面でみた場合、大腿四頭筋の中で大腿直筋のみは表層に位置しており、大腿骨に付着していないことがわかります
トリガーポイントと関連痛領域
大腿直筋の圧痛点(トリガーポイント)は起始付近と筋腱移行部に出現し、大腿直筋は股関節屈曲の主力筋であることから、近位がより重要な圧痛点となります。
股関節の屈曲を過度に繰り返す活動は大腿直筋を損傷させるリスクがあり、サイクリングやランニング、サッカーなどの競技で好発します。
アナトミートレイン
大腿直筋はSFL(スーパーフィシャル・フロント・ライン)の筋膜経線上に位置する筋肉であり、身体前面浅層において重要な筋肉になります。
筋膜の歪みは下腿まで拡がっていくため、このライン上の痛みなどがないかも確認しておくことが必要になります。
大腿直筋の歩行時の筋活動
大腿四頭筋は遊脚終期(TSw)より活動を開始し、荷重応答期(LR)には遠心性に働きながら膝関節をコントロールしていきます。
ただし、大腿直筋のみは二関節筋であるため、腸骨筋と協働して前遊脚期(PSw)の股関節屈曲に貢献します。
大腿直筋は速筋線維(白筋線維)が豊富であり、その構造から速く力強い筋収縮に有利な形態をしています。
そのため、普段の歩行時にはあまり働くことはなく、スプリントのように素早い収縮が求められるときに活躍します。
関連する疾患
- 大腿四頭筋拘縮症
- オスグッド・シュラッター病
- ジャンパー膝
- 下前腸骨棘裂離骨折
- 大腿直筋肉離れ
- 脊椎分離症
- 慢性腰痛症 etc.
大腿四頭筋拘縮症
大腿直筋の短縮を確認する方法として、腹臥位から膝関節を屈曲していくエリーテストがあります。
大腿直筋に短縮が存在している場合は、膝関節屈曲時にお尻が浮き上がる現象が認められます。
対側下肢をベッドに外に垂らして、股関節を屈曲位(約100°)に保持することで、代償動作である骨盤前傾を抑えることができます。
オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッター病やジャンパー膝は、大腿四頭筋の収縮を介して膝蓋靱帯の付着部に牽引力が加わることが原因で起こります。
大腿直筋はスプリント時やサッカーなどのボールを蹴る動作で活躍するため、痛みがある間は運動を控えることが大切です。
膝蓋腱を介しての牽引ストレスは大腿直筋の短縮が関与するので、十分に柔軟性を確保しておく必要があります。