大腿脛骨関節障害は片脚立位をチェックする

以前に担当した患者の話ですが、50代女性で主訴は右膝関節の荷重時痛、痛みは常にあるわけではないが階段では痛みが強いとのことでした。

画像検査では、レントゲン写真は問題なし、MRI画像は内側半月板に亜脱臼がみられました。

膝関節は大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節に分けられますが、荷重時痛が主訴の場合は大腿脛骨関節に問題があります。

大腿脛骨関節の主な疼痛誘発組織は滑膜や半月板外縁であり、そこに何らかのストレスが加わったことで損傷したと考えられます。

受傷機転を尋ねると、段差を踏み外したときにグキッとしてから、徐々に調子が悪くなったとのことでした。

一回の衝撃で損傷したのかはわかりませんが、MRIを見る限りは普段からストレスが加わっているのではないかとも推察されました。

歩行をみてみるとラテラルスラストは認められなかったので、次いで片脚立位をチェックすると数秒しかできませんでした。

片脚立位時は膝関節がグラグラに動揺しており、その後に筋力検査をしてみると内側広筋もやはり低下していました。

以上のことから、この患者はたまたま段差を踏み外して受傷したわけではなく、段差を踏み外してしまうほどの膝の不安定性を有していたことが原因で起こるべくして起こったと考えられます。

年齢 時間
65-69歳 44秒
70-74歳 31秒
75-79歳 21秒
80歳代 11秒

上記は、埼玉医科大学が2007年に高齢者977名を対象に、開眼片脚立位時間を調査した結果になります。

20秒未満では転倒リスクが高まることが報告されており、患者は50代後半でしたが、数秒しかできないという点でかなり不安定であったことがわかります。

ここまでの結果を踏まえて、片脚立位を安定させることが重要と考えられますが、そのためには原因を突き止めることが必要です。

単純に膝関節周囲の筋力低下が問題かもしれませんし、股関節や足関節に問題があるかもしれません。

そのあたりは個別に評価していき、最も問題がありそうなところを中心にアプローチしてみてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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