失語症者とのコミュニケーションで役立つツールをご紹介します。
失語症は認知症ではない
最初に理解しておいてほしいことは、失語症は認知症ではないということです。
とくにブローカ失語といった発語のみに障害がある患者では、理解力には問題がないために、本人としても非常にもどかしい気持ちを持っています。
わかっているのに言葉がでない状態ですので、その間違いを何度も指摘するような対応をしていては、相手は話す気力を失ってしまうかもしれません。
また、逆に言葉が出にくいからといって話しかける回数を減らすのもよくありません。なるべく会話の機会を持つようにし、ごく普通に対応することが大切です。
言葉の練習方法は専門職に聞く
ご家族思いな方々は、私たちにもなにかできるのではないかと本やネットで調べてみて、独自の言語練習を実施している場合も少なくありません。
しかし、失語の症状はヒトによって様々であり、本人に合わない方法を強引にさせると精神的な負担になってしまうことになりかねません。
そのため、もしも自宅で一緒に練習したいという希望があるなら、必ず病院で医者や言語聴覚士といった専門職の方々に聞いていただくようにお願い致します。
失語症とのコミュニケーションツール
五十音表
失語症とよく間違えられやすい症状に構音障害がありますが、こちらは話すために必要な舌の筋肉などに障害があります。
そのため、五十音表などを用いることでスムーズに会話が可能となります。
しかし失語症では、話す言葉を構成するための脳機能に問題があるため、五十音表で言葉を構成するのは困難です。
イラストボード
失語症者では、絵は具体的なイメージが喚起しやすいので、コミュニケーションツールとしてはお勧めです。
既製品のものでは種類が限られていますので、ノートに写真やイラストをスクラップして貼り、本人に合わせた形式に整えることが大切です。
磁気メモボード
失語症者とのやりとりでノートが使いやすい場合は、何度も書いたり消したりすることができる磁気メモボードがお勧めです。
仮名の読み書きが難しい方でも、漢字なら意味を理解できたり、書くことで伝えることができる場合がしばしばみられます。
漢字は絵と同じで、一文字だけを見て意味をイメージすることができます。そのため、仮名よりも有効である場合が多くなります。
コミュニケーションで心がけたいこと
失語症者はひとつの単語を理解するだけで何十秒と時間を要する場合も多く、ついつい先回りして言葉をかけてしまうことも少なくありません。
しかし、そのような状態が続いてしまうと相手は発言する意欲を失ってしまい、話すことをやめてしまうかもしれません。
相手のことを理解することは大切ですが、言葉を引き出すために、ときにはじっくりと待つことを心がけてみてください