姿勢性腰痛症は「姿勢矯正」よりも「環境調整」が大事

姿勢を変えるために必要な要素は、「可動性」と「モーターコントロール」の2つだと言われています。

関節に拘縮があると正しい姿勢(疼痛誘発組織に負担の少ない姿勢)をとることができないため、可動性があることは最低条件です。

姿勢を意識するだけで矯正することが可能なら、可動性に問題がないことが予測されるのでモーターコントロールを変化させる必要があります。

モーターコントロールを簡単に説明すると、目的とする動作を達成する際に、どの関節や筋肉を動かして実現させるかの調整です。

代表的な例として、骨盤後傾位の座位を修正する際に、腰痛があるヒトの多くは脊柱起立筋群を使用して骨盤を立てようとします。

しかしながら、脊柱起立筋群を過剰に使用して座る方法は腰部に疲労が蓄積されて、決して効率のいい座り方とはいえません。

理想的なのは腸腰筋を使用して骨盤を立てる方法で、これで腰部の張りはなくなり、効率のいい運動方法を実現できます。

モーターコントロールを変化させるためには、その動作を少なくとも2500回は反復する必要があるとされ、日頃からの意識付けが重要となります。

ただし、姿勢は生まれ持ったもの(DNA)で決定される部分が多いので、専門知識を持たない患者が根気よく姿勢を意識しながら修正していくことは非常に難渋します。

そのため、普段の姿勢を変えるためには「姿勢を意識」することよりも、「環境を調整」することのほうが手っ取り早いです。

座位で腰椎屈曲が増強してしまうケースでは、椅子に浅く座ることで自然と骨盤が立ち、腰椎伸展位を保つことができます。

また、スタンディングデスクを活用するなどして、長時間の座位をとらないように調整していくことも有効です。

反対に立位で腰椎伸展が増強してしまうケースでは、足元に台を置いて、そこに片足を乗せるなどして骨盤を後傾させるようにします。

仕事で長時間の立位をとる必要があるようなら、1時間おきにでも腰椎を屈曲させて保持するような動きをとることも大切です。

不良姿勢が原因の疼痛は「姿勢矯正」よりも「環境調整」が大事であり、最終的には姿勢を整えていくことが求められます。

姿勢を変えるためには患者自身が現状を理解し、正しい知識を持ち、根気強く姿勢を意識していくことが必要となります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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