先日に東京で開催された体外衝撃波治療器に関する学術大会に参加したので、その感想をツラツラと書いていきます。
簡単に体外衝撃波治療器について説明すると、衝撃波(音速を超えたら発生する圧力の波)を組織にぶつけて治療する機器です。
元々は腎臓にできた結石を身体の外側から加える衝撃波によって粉々に砕き、膀胱から排出させるために開発されました。
それが最近の基礎研究により、様々な臨床応用ができるのではないかと考えられるようになり、近年は多くの現場にも普及しています。
例えば、2012年に一部の体外衝撃波治療器(収束型)は難治性足底腱膜炎への治療で保険適用を承認しています。
現在の保険適用は難治性足底腱膜炎のみですが、今後の臨床研究で効果が認められるようになると適用範囲が拡大する可能性もあるはずです。
話を戻しますが、今回の「SHOCK WAVE JAPAN 2019」の中で、最も面白い講演だったのは千葉県こども病院の西須先生の話でした。
西須先生は1994年より衝撃波の基礎研究をされてきており、その道では重鎮とも呼べる存在です。
その先生らが行った動物実験の結果から、以下の項目が今後の臨床応用として考えられると話されていました。
- 非観血的寛骨臼形成
- 骨壊死の治療
- 過成長や成長軟骨板骨性架橋の誘導による脚長不等・骨変形の治療
- 変形性関節症の除痛
- 神経筋接合部への作用による痙性麻痺の治療
- 仮骨延長術における骨成熟の促進
- 局所への遺伝子導入 etc.
適度な刺激の衝撃波には骨形成を促す作用があるので、先天的に寛骨臼が浅いケースに使用することで臼蓋不全の治療に役立てることができます。
ただし、骨膜は疼痛感受性が非常に高い組織であるため、衝撃波による痛みをどのようにして緩和させるかなどの課題も残ります。
また、強すぎる衝撃波は骨破壊を引き起こしますし、骨形成を促進しすぎると逆に骨の強度が低下するという報告もあるようです。
最適な強さや頻度については課題が残る部分もありますが、骨形成を促す作用は既存の超音波よりも格段に強いことは紛れもない事実です。
そのため、現在は偽関節の予防(骨形成の促進・血管新生)や疲労骨折(骨強度の増加)に対して使用されることも増えてきています。
前述したように衝撃波治療器を使用したところで保険適用にはならず、厳密に書くと消炎鎮痛等処置の35点にしかなりません。
これはランニングコストのほうが圧倒的に高くつくので、消炎鎮痛等処置で算定すればするほど赤字になっていくような状態にあります。
消炎鎮痛等処置ではなく自由診療(保険適応外)として請求しているところも半数ほどありますが、値段設定などは難しいところだと思います。
このような現状が体外衝撃波治療器が普及しにくい問題にもなっているので、さらなる研究が求められています。