寝返り動作から起き上がり動作までの姿勢分析の評価とポイント

仰臥位姿勢の観察方法と寝返りから起き上がりまでの流れについて解説していきます。

仰臥位の姿勢評価

仰臥位の支持面(荷重面)は、主に後頭骨、肩甲骨、仙骨、踵骨に集中しています。

そのため、ベッド上で寝たきりとなっている患者では、これらの支持面の血流が阻害されやすく、褥瘡を起こしやすい部位になります。

高齢者では背骨が潰れて曲がってしまっている方々も多く、脊椎の突出している部分に荷重が集中している場合があります。

なので、まずは患者が身体のどの部分で支持しているかを確認し、必要に応じて発赤などが出現していないかの皮膚状態を確認していきます。

左右非対称性があるかを確認する

基本的に仰臥位での身体は左右対称となっているはずですが、痛みなどで筋肉の過緊張などが存在すると非対称性が出現します。

例えば、肩に痛みがある患者では疼痛側の肩関節が挙上したポジションをとりやすく、周囲筋の緊張が亢進しています。

非対称性でチェックしておきたい部位として、肩関節と肋骨および骨盤の高さ、上肢と下肢の回旋の度合いは最低限に確認しておきます。

寝返り動作の姿勢分析

仰臥位は支持基底面が広く、重心も低い位置にあるので最も安定している姿勢といえます。その姿勢を変化させるというのは、とても労力がいる作業です。

寝返りを実現するためには、重心を寝返りたい側の支持基底面の外側に移動させることが必要となります。

健常者であれば、腹斜筋などの体幹を回旋させる筋肉を強く収縮させて強引に持っていくこともできますが、高齢者ではそういうわけにもいきません。

寝返りをしやすい姿勢を作る

筋力をあまり使わずに重心を外すためには、①支持基底面を狭める、②重心を高くする、③重心の位置を寝返りたい側にずらすことが必要になります。

例えば、両下肢を屈曲させると曲げた分だけ支持基底面は狭くなり、さらに重心の位置が高くなるため、安定性が低下して動きやすい状態になります。

さらに寝返りたい側に頚部や上下肢を移動させることにより、重心は寝返りたい側に移動するため、支持基底面からより外しやすい状態を作れます。

そして寝返りに必要な筋力が最小限となるように調整してから、最後に頭部や胸郭、骨盤の回旋筋を使用して寝返りを実施していきます。

起き上がり動作の姿勢分析

起き上がりのパターンはいくつかありますが、ここでは寝返りから肘での支持位(on elbow)、手での支持位(on hand)を経て起き上がる方法を記載します。

寝返りまでの方法は上述しましたが、その際に寝返り側の肘から前腕部で上半身を支えるように身体を誘導していきます。

しっかりと寝返り動作ができており、かつ肘部を支点に上半身を乗せるような感覚で誘導ができたら、それほど筋力を使用せずに肘での支持が可能です。

ぎっくり腰,起き上がり方,腰に負担をかけない

とくに体幹筋が弱い高齢者では、ややうつ伏せとなるようにしっかりと上半身を回旋し、さらに反対の手で床を押すように上体を起こします。

また、ベッド上の起き上がりでは下肢が地面に落ちる力を利用して、上半身を持ち上げることもできます。

いずれの場合も寝返りからのスムーズな動きが肝心であり、ひとつの流れとして身体で覚えていくことが重要です。

そうすることで、ほとんど体幹筋を使用しないでも起き上がることが可能となります。

そこから手での支持位に移行するために、上腕三頭筋による肘関節の伸展、広背筋による肩関節の伸展を働かせて起き上がっていきます。

最終的には殿部が支持基底面となるので、上半身を押し上げたら重心線が殿部の支持面に移るように誘導し、最後に手の支えを外して坐位とします。

おわりに

文字ばかりの説明で少しわかりにくかったかと思いますが、ポイントは肘にしっかりと上半身を乗せられるかどうかにかかっています。

そのためには、体幹の拘縮などがなく、しっかりと寝返りしやすいポジションに身体を誘導できているかが重要になります。

もしも身体の誘導が困難な場合は、頚部や体幹の屈筋群を鍛えるようにし、筋力で補うようにして対応することもできます。

または、ベッド柵やタッチアップなどの補助具を使用して、他の筋肉を使用して体幹を持ち上げることができるように調整してください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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