この記事では、尺側手根伸筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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尺側手根伸筋の概要
尺側手根伸筋は前腕後面の浅層に位置する筋肉で、起始部を上腕骨と尺骨に持っているため、上腕頭は二関節筋になります。
尺骨手根伸筋は前腕後面を走行していますが、手関節背屈の作用はほぼなく、手関節の純粋な尺屈に作用します。
理由としては、橈骨手根関節より近位では屈伸軸の背側を通過しますが、手根中央関節より遠位では掌側を通過するため、互いの作用が相殺されるためです。
スポーツ場面においては、手首のスナップを効かせた動き(卓球のカット動作、空手チョップを打つ動作)で使用されます。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | 橈骨神経 |
髄節 | C7-8 |
起始 | ①上腕頭:上腕骨の外側上顆
②尺骨頭:尺骨の斜線と後縁 |
停止 | 第5中手骨底の背側面 |
栄養血管 | 尺骨動脈 |
動作 | 手関節の尺屈 |
筋体積 | 17㎤ |
筋線維長 | 7.4㎝ |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
手関節尺屈 |
手関節背屈 |
1位 | 尺側手根屈筋 | 総指伸筋 |
2位 | 尺側手根伸筋 | 長橈側手根伸筋 |
3位 | 小指伸筋 | 短橈側手根伸筋 |
4位 | – | 尺側手根伸筋 |
尺側手根伸筋の触診方法
写真では、手関節の「背屈+尺屈」方向に力を入れてもらい、尺骨頭の起始部にて収縮を触知しています。
尺側手根伸筋腱は手の甲の付け根にある伸筋支帯の最も尺側である第6区画を通過します。
ストレッチ方法
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肘関節伸展・前腕最大回外・手関節掌屈位にてベッドに手を置き、手背母指側に体重を乗せるように誘導しながら、手関節の掌屈・橈屈を増大させます。
筋力トレーニング
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立位にて上肢を下垂した状態でダンベルを握り、肘関節は伸展したまま、手関節を尺屈・背屈させて重りを持ち上げます。
トリガーポイントと関連痛領域
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尺骨手根伸筋にトリガーポイントが出現すると、関連痛は手関節の尺側面(主に背部)から小指に起こります。
尺側手根伸筋腱は前腕回外位から回内位へ移る際に、尺骨茎状突起基部の膨隆を乗り越えるように走行が変化します。
そのため、伝票めくりなどの回内外動作が多い事務職では、しばしば尺側手根伸筋腱鞘炎を引き起こします。
アナトミートレイン
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尺側手根伸筋はSBAL(スーパーフィシャル・バックアーム・ライン)の筋膜経線上に位置しています。
SBALに障害が起きると背側骨間筋にも影響を与えることになり、第2-3指に痛みやしびれ感が出現します。
SFALに障害が起きると長母指屈筋と浅・深指屈筋が影響を受けることになり、第1指と第3-5指に痛みやしびれ感が出現しやすいです。
関連する疾患
- 尺側手根伸筋腱腱鞘炎
- 尺側手根伸筋腱脱臼
- 尺側手根伸筋腱断裂
- 上腕骨外側上顆炎 etc.
TFCCと尺側手根伸筋腱
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手関節の尺側には三角線維軟骨複合体(TFCC)と呼ばれる組織があります。
これは三角線維軟骨と複数の靭帯により手根骨と尺骨を結合することにより、手関節の緩衝作用や安定化を担っています。
尺側手根伸筋腱は三角軟骨複合体の尺側を支持する壁となっています。