この記事では、恥骨筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。
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恥骨筋の概要
恥骨筋は股関節前面に位置しており、股関節内転筋群(①大内転筋、②長内転筋、③短内転筋、④薄筋、⑤恥骨筋)のひとつです。
内転筋群の中で最も上部に位置する扁平な筋肉で、大腰筋と長内転筋の間を走行しています。
起始が骨盤の前方(恥骨櫛)にあるため、大腿骨を引き寄せるようにして股関節の屈曲・内旋にも作用します。
恥骨筋が収縮すると内股姿勢となるため、作用の覚え方としては、「恥ずかしいので股を閉じる」と覚えてください。
基本データ
項目 |
内容 |
支配神経 | ①大腿神経(L2-3)
②閉鎖神経の前枝(L2-4) |
起始 | 恥骨櫛 |
停止 | 大腿骨粗線の近位部と恥骨筋線 |
動作 | 股関節の内転,内旋,屈曲 |
筋体積 | 65㎤ |
筋線維長 | 7.2㎝ |
速筋:遅筋(%) | 50.0:50.0 |
運動貢献度(順位)
貢献度 |
股関節内旋 |
股関節屈曲 |
1位 | 中殿筋(前部) | 大腰筋 |
2位 | 小殿筋 | 腸骨筋 |
3位 | 大内転筋 | 大腿直筋 |
4位 | 恥骨筋 | 大腿筋膜張筋 |
5位 | 長内転筋 | 恥骨筋 |
恥骨筋の触診方法
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鼡径靭帯・長内転筋・縫工筋から構成される大腿三角(スカルパ三角)の後方、大腿動脈の拍動が触れる部分の後方で筋腹を触診ができます。
股関節を軽度屈曲位に保持し、股関節屈曲・内転・内旋といった複合運動に対して抵抗をかけることで筋の収縮が触知できます。
ストレッチ方法
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股関節を伸展・外転、膝関節を屈曲させた状態でベッドに下肢を乗せて、もう反対の大腿前面に両手は置きます。
立脚側の膝関節を曲げるようにして、ベッド上の下肢の外転角度を拡大していくことで恥骨筋を伸張していきます。
筋力トレーニング
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仰向けになって膝を立て、ゴムボールや枕などの柔らかい素材を両膝の間に挟み、それを潰すようにして力を入れていきます。
トリガーポイントと関連痛領域
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恥骨筋に圧痛点(トリガーポイント)が出現すると、股関節前方に痛みが生じることになります。
スポーツ選手の股関節痛として起こりやすく、とくにサッカー選手ではインサイドキックを多用するために好発します。
恥骨筋などの内転筋群に短縮が存在すると、歩行時の歩隔(左右の足の開き)が狭くなることにつながります。
さらに強いと、下肢が内旋位となり、足を交差させて歩くようになります。
マッサージ方法
患者に背臥位をとってもらい、術者は恥骨櫛(起始部)を母指で押圧し、大腿骨粗線(停止部)に向けて滑らせていきます。
硬結部を発見した場合はその都度に持続圧迫を加え、リリースしていきます。
恥骨筋の表層には大腿動脈・静脈や陰部大腿神経が走行しているため強く圧迫しすぎないように注意しながらアプローチします。
関連する疾患
- 恥骨筋炎
- 内転筋拘縮 etc.
恥骨筋炎
歩行時に股関節屈曲モーメントや内転モーメントが生じるヒトでは、恥骨筋の緊張が増大することにつながります。
また、前述したように恥骨筋を過剰に使用するスポーツ(サッカーなど)では、オーバーユースに伴う恥骨筋炎を引き起こすリスクが高いです。