慢性痛を語るうえで「自律神経障害」は避けては通れない道であり、自律神経障害の多くは「交感神経優位」が根底にあります。
交感神経優位とは、交感神経の活動が高まっている状態、または副交感神経の活動が低下している状態といえます。
副交感神経が低下すると、身体に十分な血液が届けられず、集中力が低下し、免疫力を下げることにもつながります。
また、筋肉への血流が乏しくなるため、筋・筋膜性疼痛を発生(増悪)させる原因にもなります。
交感神経優位となる原因として「ストレス」が挙げられますが、ストレスの9割は人間関係に起因するともいわれています。
身体に不調が生じてくると、それもまた新たなストレスとなり、悪循環となることも少なくありません。
慢性痛を抱えている人は不眠症があるケースが多く、不眠症はまさに交感神経優位のサインといえます。
そのため、夜にしっかりと眠ることができ、朝に気持ちよく起きられるということが自律神経が整っているという合図にもなります。
人間関係などの社会的ストレスをこちらが変えていくことは難しいので、まずは生活習慣から変えていくといいかもしれません。
例えば、一日に20〜30分ほど軽くウォーキングできると、適度に副交感神経を高めてくれて、さらに疲労感から眠りやすくもなります。
本格的に運動をするとかえって交感神経が上がってしまうので、軽くできる運動という部分がポイントになります。
夜はシャワーで済ませるのではなく、しっかりと湯船に浸かるなどして身体を温めてあげることも良質な睡眠につながります。
臨床において、目に見える機能面ばかりを追いかけても、痛みが全く良くならないことは多々あります。
そのときに「自律神経」という視点を持っておくと、もっと視野を広げてアプローチしていくことができるはずです。