手指骨折のリハビリ治療に関する目次は以下になります。
この記事の目次はコチラ
手指骨折の概要
指の骨折はその機能から、母指の中手骨骨折、その他の中手骨骨折、基節骨骨折、中節骨骨折、末節骨骨折の5つに大きく分類されます。
部位によってリスクや予後が大きく異なりますので、それぞれの特徴を理解してから治療をしていく必要があります。
①中手骨骨折(母指)
- 母指の先端に長軸方向の力が加わった際に生じやすい
- 長母指外転筋によって橈側骨片が近位側に回転解離して外転制限をきたす
- 関節腔の狭小化による痛みが起こり、内転変形でつまみ・把持動作に制限が生じる
- 整復位保持が困難なため、内固定とスプリントを用いた外固定が併用されることが多い
②中手骨骨折(母指以外)
- 背側凸変形となって伸筋腱の滑走障害が起こる
- 浮腫が強い場合は内在筋拘縮などによりMP関節の伸展制限をきたす
- 環指と小指で発生しやすい
③基節骨骨折
- 基部あるいは骨幹部骨折の頻度が高い
- 骨幹部骨折では回旋変形が生じるため隣接指と重なって把持動作に障害をきたす
- 掌側凸変形となって屈筋腱との癒着を生じやすい
④中節骨骨折
- 比較的まれな骨折で挫滅損傷を伴うことが多い
- 骨折部位が近位では背側凸変形、遠位では掌側凸変形となる
- 背側凸変形では伸筋腱の滑走障害、掌側凸変形では屈筋腱の滑走障害が起こる
⑤末節骨骨折
- 機械に挟まれて受傷することが多く、とくに母指と中指に発生しやすい
- 基部背側での骨折では終止腱の損傷により槌指変形を生じる
骨折後の整復について
骨折後は、骨癒合を促進するためにまずは元の位置に整復していきます。方法として、徒手や牽引などを用いた非観血的整復か、手術による観血的整復が行われます。
整復後の固定は、骨折の程度や状態をみながら、外固定法か内固定法かを選択します。
外固定法
- 隣接指とのテーピング、ギプス、スプリントなどを用いて固定する
内固定法
- 鋼線、スクリュー、プレート、髄内釘などを用いて手術的に骨折部を連携固定する
治療のポイント
骨折部の整復を維持しながら、骨折に関与していない関節の可動域を保ち、骨癒合後は固定されていた関節の可動域の拡大と筋力を強化し、手の機能を再獲得していきます。
非損傷関節は、受傷直後から自動運動による関節可動域運動を開始することで、腱と骨折部の癒着や浮腫などを予防することができます。
リハビリテーション
内容 | 項目 |
1.骨癒合期(外固定で整復位が維持されている状態) | |
装具療法 | 隣接指とのテーピング、ギプス、スプリント |
生活指導 | 負担のかからない動作指導、手挙上位の保持(浮腫軽減) |
運動療法 | 患部以外のROM運動、ひも巻き法 |
2.固定除去後の初期(低負荷での実施) | |
装具療法 | コイルスプリント、buddy splint |
物理療法 | 温浴療法 |
運動療法 | ROM運動(自動,他動)、finger trapping、腱滑走練習 |
3.固定除去後の後期(高負荷での実施) | |
装具療法 | ダイナミックスプリント |
運動療法 | 関節モビライゼーション、ROMex、筋力強化、巧緻動作 |
関節可動域運動について
強い痛みを生じさせるような暴力的な他動運動では、関節によっては異所性骨化の原因にもなるので注意が必要です。また、患者の意欲を損ねてしまう場合も少なくありません。
第2-5指の屈曲運動は深指屈筋でが行っており、どれか1指でも伸展拘縮が生じると、他の指にまで障害をきたしてしまいます。
内固定が施行された安定性のある骨折では、痛みがとれたら早期に自動運動を開始することが推奨されます。
装具の種類(一部)
コイルスプリント | マレットフィンガー | バディーストラップ |
CM関節症装具 |
引用:義肢装具.com