手関節尺側の痛みの原因とリハビリ治療

手関節尺側の痛みの原因とリハビリテーションによる治療方法について解説していきます。

①TFCC損傷

三角線維軟骨

三角線維軟骨複合体(TFCC)は手関節の尺側に存在し、三角線維軟骨と複数の靭帯で構成され、手根骨と尺骨を結合しています。

機能としては、①下橈尺関節の安定化、②橈骨手根関節の尺側支持機構、③尺側への力の伝達とクッション作用の3つになります。

手関節の捻挫やスポーツ動作で損傷しやすく、単純X線写真では異常が認められないため、しばしば見逃されやすい障害です。

治療方法として、三角線維軟骨の辺縁部は血管が存在して自然治癒が望めるため、新鮮断裂に対しては保存療法がとられます。

固定と安静にて痛みが軽快しない場合には、観血的手術(デブリドマン)の適応となります。

②尺骨突き上げ症候群

尺骨突き上げ症候群1

通常、手関節の橈骨と尺骨は同じ長さですが、橈骨遠位端骨折で橈骨が短縮したり、先天的に尺骨が長い場合は尺側の関節内圧が上昇します。

そうすると、三角線維軟骨複合体や手根骨が圧迫され、痛みが生じることになります。これを尺骨突き上げ症候群と呼びます。

治療方法として、周囲組織の炎症が治まるまでは患部の安静を図り、必要に応じてサポーターなどを着用します。

基本的には骨アライメントの変化に伴う障害ですので、痛みを繰り返す場合は手術療法にて尺骨の短縮術を行います。

③尺側手根伸筋腱炎

尺側手根伸筋腱の損傷

尺側手根伸筋は、上腕骨と尺骨から起始しており、第5中手骨に停止している二関節筋になります。

手関節をまたぐ伸筋ではありますが、背屈の作用はほぼなく、手関節の純粋な尺屈運動に作用します。

尺側手根伸筋腱は尺骨遠位端の尺骨溝を通過し、その表層を「subsheath」と呼ばれるバンドが覆っています。

その部分で腱に対する摩擦ストレスが繰り返し加わることで損傷し、炎症を起こすことで痛みが生じます。

治療方法としては、炎症が治まるまでは患部の安静が必要なため、必要に応じて尺屈制限のあるサポーターなどを着用します。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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