拘縮は原因別に、以下に分類することができます。
①筋線維性拘縮
筋線維の短縮や筋原線維の配列の乱れ、Z帯の断裂など、筋線維自体が器質的に変化している拘縮を指します。
器質的変化が起きる原因は、長期間の固定、筋損傷後の瘢痕、筋原性疾患、Volkmann拘縮などがあります。
筋肉が原因の拘縮(筋性拘縮)は、「筋線維」と「筋膜」に分けることができ、両者は明確に区別しておくことが必要です。
筋性拘縮において、筋膜よりも筋線維の関与は低いと考えられています。
(文献:Udaka J,er al:Disue-induced preferenitial loss of the giant protein titin depresse muscle performance via abnormal sarcomeric organization,J Gen Physiol 131:33-41,2008)
②筋膜性拘縮
筋膜性拘縮は結合組織性拘縮の一種になります。
結合組織性拘縮は、主要構成成分であるコラーゲン線維の変化が関与します。
筋膜はコラーゲン線維が組織の長軸方向に対してさまざまな方向に配列しており、一定の伸張性を持っています。
長期間の固定などによって筋膜(結合組織)に肥厚が認められるようになると、その伸張性を失ってしまいます。
肥厚した状態というのは、交差したコラーゲン(膠原)線維とエラスチン(弾性)線維がからみついた状態(高密度化)にあります。
高密度化をリリースするためには、肘や手指などで摩擦を与えて熱を生じさせる必要があり、通常は一箇所に2〜10分の施術を要します。
③関節包性拘縮
関節包性拘縮は結合組織性拘縮の一種になります。
滑膜はコラーゲン線維の構成が疎であることから、元来、伸張性に富んでいる組織になります。
それが関節の炎症や不動などによって器質的変化が生じると、拘縮の原因となります。
関節包は深部に存在しているので徒手的に摩擦を加えることが困難であるため、超音波やマイクロ波などを用いて熱を加える方法が有効です。
また、関節モビライゼーションにて組織に動きを与えることで、徐々に伸張性を高めていきます。
④皮膚性拘縮
皮膚性拘縮は結合組織性拘縮の一種になります。
皮下組織はコラーゲン線維の構成が疎であることから、元来、伸張性に富んでいる組織になります。
そのため、器質的変化による影響を受けやすい組織でもあります。
皮下組織は筋膜よりも浅層に位置していることを念頭に置き、問題のある層に対して適切にアプローチすることが求められます。
⑤靱帯性拘縮
靱帯性拘縮は結合組織性拘縮の一種になります。
コラーゲン線維は密な構成をしており、組織の長軸方向に対してほぼ平行に配列していることから、元来、伸張性に乏しくなっています。
そのため、器質的変化が生じても影響は大きくありません。
⑥腱性拘縮
腱性拘縮は結合組織性拘縮の一種になります。
コラーゲン線維は密な構成をしており、組織の長軸方向に対してほぼ平行に配列していることから、元来、伸張性に乏しくなっています。
そのため、器質的変化が生じても影響は大きくありません。
拘縮を引き起こす責任病巣
上の画像は、ラット膝関節を屈曲位で2週間ギプス固定した場合に、各組織の関与率を調べた結果を示したグラフです。
(文献:灰田信英,他:拘縮の病理と病態,奈良勲,他(編):拘縮の予防と治療,医学書院,2003,pp18-36)
筋・筋膜といっても、筋線維と筋膜では拘縮の分類や治療法が異なるので注意が必要です。
責任病巣の割合(関与率)は不動期間が延長するに従って、骨格筋の比重が減少していくことが報告されています。
(文献:岡本真須美,他:不動期間の延長に伴うラット足関節可動域の制限因子の変化−軟部組織(皮膚・筋)と関節構成体の由来の制限因子について.理学療法学 31:36-42,2004)
筋収縮による関節可動域制限
関節可動域制限を「関節拘縮」と表現する場合は多いですが、筋攣縮(収縮)による制限は関節拘縮に含めるべきではありません。
筋肉の攣縮は筋リラクゼーションで即時に改善するため、拘縮と呼ぶには不適切であると考えられているからです。
なぜ含めて考えるようになったかを紐解くと、英語では拘縮を「contracture」と表記し、収縮するという単語が語源となっています。
そのため、筋肉の攣縮も拘縮に含まれるようになってしまい、拘縮の定義が拡大されてしまいまいた。
そのため、拘縮の原因はあくまで上記に述べたものが主であり、筋収縮に伴う関節可動域制限は含まないことにします。