整形外科の外来リハビリで対応することが多い問題点

整形外科の外来リハビリで対応すべき問題点は大きく分けて「5つ」です。

これを知っておくと病態の整理がしやすくなり、治療もシンプルになるので、ぜひ項目だけでも覚えて帰ってください。

問題点①:筋性拘縮

筋性拘縮とは、筋肉の伸張性が低下した状態であり、「筋攣縮」と「筋短縮」に分けることができます。

筋攣縮とは、生理学的には「意識とは関係なく筋の痙攣と虚血が生じている状態」を意味します。

簡単に書くと筋肉に痛みが出やすい状態であり、筋緊張の増大、圧痛、伸張時痛、収縮時痛などが認められます。

筋攣縮に対する治療法は、筋リラクゼーション(マッサージなど)になります。

攣縮 短縮
圧痛 認める 認めにくい(少ない)
伸張位 緊張増大、疼痛出現 緊張増大
弛緩位 緊張低下も緊張は残存 緊張低下
等尺性収縮時痛 顕著に出現しやすい 出現しにくい
筋力低下 認めやすい 認めにくい

筋短縮は名前の通りに筋肉が短縮した状態で、筋攣縮とは異なり筋自体に痛みが起こることはなく、最大伸張位でツッパリ感を訴える程度です。

筋短縮で問題となるのは関節拘縮に伴う関節内インピンジメント、もしくは隣接関節の過剰モビリティに伴う関節障害になります。

関節内インピンジメントを簡単に説明すると、関節周囲に硬さが存在することにより、骨頭が硬い側とは反対に変位する現象をいいます。

そのため、筋ストレッチング時に関節内インピンジメントが生じていると筋短縮側ではなく、反対側に痛みを訴えることが特徴です。

筋短縮に対する治療法は、筋ストレッチングになります。

問題点②:組織間癒着

怪我などの炎症性疼痛、手術侵襲、固定などの長期不動では、その周囲に瘢痕組織が形成されて組織間に癒着が生じます。

組織間の滑走障害や組織の弾力性が高くなると、関節拘縮や離れた部位の痛みを起こすことにつながります。

組織間癒着に対する治療は、組織間リリース(筋膜リリースなど)になります。

問題点③:関節包縮小

関節内組織に炎症が生じると関節包は腫脹し、炎症後も関節包の厚みが肥厚したまま関節腔が縮小してしまう場合があります。

その代表的な疾患が五十肩であり、炎症が落ち着いてからは関節包の縮小に伴う可動域制限(関節内インピンジメント)が最大の問題となります。

関節包縮小に対する治療法は、関節モビライゼーションになります。

問題点④:筋力低下(筋出力不足)

筋力低下は筋肉が萎縮した状態を指し、原因としては、廃用性、外傷性、関節拘縮などが挙げられます。

筋力低下に対する治療法は、筋力トレーニングになります。

筋出力不足は筋力低下(筋萎縮)がなくても力を上手く発揮できない状態を意味し、神経麻痺とは異なる病態を指します。

原因としては、疼痛、関節内水腫、腫脹、関節不安定症などが挙げられます。

筋出力不足に対する治療法は、筋再教育になります。

問題点⑤:アライメント不良

アライメント不良の修正には3つのステップがあり、①リアライン、②スタビライズ、③コーディネイトの順序に進めていきます。

アライメントとは「骨の配列」を指し、マルアライメントとは「アライメントが崩れた状態」=「骨の配列が崩れた状態」をいいます。

リアラインとは、マルアライメントを整えるということであり、崩れた骨の配列を理想的な状態にまで持っていくことを意味します。

マルアライメントの代表例として、扁平足や外反母趾、腰椎前方すべり、上腕骨骨頭の前上方変位などが挙げられます。

リハビリのみでは対応できないことも多いので、補助具(サポーターやインソール)を使用して調整することも必要となります。

スタビライズとコーディネートは、整えられた姿勢を保つための練習で、スタビライズは「矯正した姿勢を保つ筋収縮の反復」になります。

コーディネイトはより高度なコントロールで、動きの中で矯正した姿勢を保つ練習になります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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