梨状筋(piriformis)

この記事では、梨状筋を治療するために必要な情報を掲載していきます。

梨状筋の概要

梨状筋の起始停止

梨状筋の起始停止2

梨状筋は殿部深層に位置する筋肉で、洋なしの形に見えることが名前の由来となっています。

梨状筋は非常に硬くなりやすい筋肉であり、深層には坐骨神経が通過しているため、しばしば坐骨神経を圧迫して神経障害を起こします。

その状態を梨状筋症候群といい、殿部から下肢後方にかけての痛みやしびれを引き起こす原因になります。

梨状筋は股関節の深層外旋六筋のひとつですが、股関節90度屈曲位では内旋作用に変化することが特徴です。

基本データ

項目

内容

支配神経 仙骨神経叢
髄節 S1-S2
起始 仙骨前面
停止 大腿骨の大転子の尖端内側面
栄養血管 下殿動脈、外側仙骨動脈、上殿動脈
動作 股関節の外旋(※股関節90度屈曲位で内旋に変化)

股関節の外転

筋体積 53
筋線維長 2.6
速筋:遅筋(%) 50.050.0
筋連結 大殿筋、中殿筋、小殿筋、上双子筋

運動貢献度(順位)

貢献度

股関節外旋

1 大殿筋
2 大腿方形筋
3 内閉鎖筋
4 中殿筋(後部)

※深層外旋六筋の中では大腿方形筋と内閉鎖筋の貢献度が高いです。

股関節の深層外旋六筋

股関節深層に位置する外旋筋を総称して深層外旋六筋と呼びます。

具体的には、①梨状筋、②内閉鎖筋、③外閉鎖筋、④上双子筋、⑤下双子筋、⑥大腿方形筋の6つの筋肉で構成されています。

梨状筋は深層外旋六筋の中で最も上方に位置しており、股関節の外転にも作用することが特徴です。

深層外旋六筋の筋出力(順位)

順位

股関節外旋筋群

1 大腿方形筋
2 内閉鎖筋
3 梨状筋
4 外閉鎖筋
5 下双子筋
6 上双子筋

梨状筋の触診方法

梨状筋は大殿筋に覆われているため、触診する際は腹臥位をとってもらい、膝関節を90度屈曲した状態で股関節を外転・外旋させます。

表層の大殿筋を十分に弛緩させたら、指腹を殿部に押し込んで仙骨外側縁(起始部)に触れるように圧迫します。

梨状筋はコリコリとした硬さを触知できるので、そのまま筋の走行に沿って大転子上縁(停止部)まで指を滑らせていきます。

坐骨神経を圧迫すると、非常に不快な、電気の走るような感覚を訴えることがあるので注意してください。

ストレッチ方法

梨状筋のストレッチング

腹臥位で膝を屈曲し、手で前足部を内側から把持し、 足部を外側に倒しながら股関節を内旋していきます。

他の方法として、梨状筋は股関節90度屈曲位で作用が内旋に変化するので、座位から股関節を外旋させて片脚だけあぐらを組むようにします。

その姿勢から身体を前に倒すようにして、お尻が張るのを感じながらストレッチを行います。

筋力トレーニング

梨状筋の筋力トレーニング

足部前方にセラバンドを巻き付けて、下肢を外旋させます。

アナトミートレイン

斜角筋:筋膜:DFL

梨状筋はアナトミートレインの中で、DFL(ディープ・フロント・ライン)の下後部路線の一部に接続を持ちます。

しかし、股関節の深層外旋六筋は大腿を真っ直ぐに上行してきた筋にほぼ直角に走行するため、この接続は筋膜経線とみなされません。

そのため、梨状筋の硬結障害においては筋膜の繋がりによるものよりも、坐骨神経の圧迫による影響が主になります。

梨状筋の痛める原因

速い方向転換を必要とするスポーツ(テニス、サッカー、バレーボールなど)は、梨状筋を痛めるリスクが高いです。

また、物を持ち上げながらひねる必要のある作業も、梨状筋に過度のストレスを与えることになります。

一方では、長時間の座位など、運動不足も梨状筋のトリガーポイントの発達を助長することにつながります。

若者では梨状筋の症状は過度の活動から生じ、高齢者では運動不足から生じやすいことが特徴です。

関連する疾患

  • 梨状筋症候群
  • 仙腸関節障害
  • 変形性股関節症
  • 大腿骨頚部骨折 etc.

梨状筋症候群

坐骨神経と梨状筋

坐骨神経の走路には個人差があり、梨状筋の上または下を通っており、場合によっては貫通(又は一部貫通)しているケースもあります。

そのため、梨状筋の浮腫や過度な緊張は坐骨神経を圧迫することにつながり、坐骨神経痛を起こす原因になります。

バレエ・ダンサーは、恒常的に股関節の外旋動作(名称:ターンアウト)が要求されるため、梨状筋症候群を発生しやすいことが報告されています。

坐骨神経は梨状筋の下を通過する 坐骨神経が梨状筋の一部を貫通する
坐骨神経が梨状筋を挟んで通過する 坐骨神経が梨状筋を貫く

坐骨神経の走行のほとんどはAタイプであり、梨状筋の下を通過しています。

残りの10%は坐骨神経を貫通していたり、梨状筋の上を通過するといった特殊型になります。

梨状筋症候群においては、タイプBやタイプDといった梨状筋を貫通しているものに発生しやすい傾向にあります。

仙腸関節障害

左梨状筋の緊張が増大しているケースでは、仙骨は前額面で左傾斜し、仙骨遠位は右に変位します。

そのように梨状筋の問題は仙腸関節のねじれを引き起こす原因となるため、仙腸関節障害と考えられる場合は梨状筋のチェックが必要です。

梨状筋にトリガーポイントが形成されていると、長く座位をとることができず、体重移動を頻繁に行う傾向があります。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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