椎間板ヘルニア(坐骨神経痛)に対するSLRテストの方法

セラピストならよく知っているであろうSLRテストについて、その派生する検査も含めて解説していきます。

SLRテストの概要

SLR(Straight leg raise)は、別名「下肢挙上テスト」とも呼ばれます。坐骨神経(L5-S2)とその硬膜を末梢側に伸張します。

方法として、膝を伸展位にしたまま、術者はゆっくりと患者の足を挙上していきます。患者が痛みを訴えたところで止め、検査台との角度を測定します。

SLRテスト②

0-70度の間で下肢後面に電撃痛が走った場合は陽性となります。加えて、主にL5-S2の神経根の障害を疑います。

障害レベルを絞るためには、反射テスト、知覚神経、筋力検査等の神経学的検査を組み合わせて実施していくことが大切です。

また、確定診断のためにはMRIやCT等の画像検査との一致が重要です。

SLRの確証検査

SLRテストは感度が高い検査ではありませんので、確証を得るためにいくつかのテストを組み合わせて実施することが大切です。

その具体的な検査方法について記載していきます。

シカール徴候

SLRテストで陽性となった角度から約5度降ろし、検査者は足の親指を伸展させます。下肢後面の電撃痛が再現されたら陽性とします。

5度降ろす理由としては、ハムストリングを弛緩させることで筋の短縮と鑑別することができるからです。

シカール徴候

ブラガード徴候

SLRテストで陽性となった角度から約5度降ろし、検査者は足関節を背屈させます。下肢後面の電撃痛が再現されたら陽性とします。

ブラガード徴候

ボンネー徴候

SLRテストで陽性となった角度から約5度降ろし、検査者は下肢を内旋、内転させます。下肢後面の電撃痛が再現されたら陽性とします。

ボンネー徴候

股関節外旋SLR

SLRテストで陽性となった角度から、検査者は股関節を外旋させます。下肢後面の電撃痛が再現されたら陽性とします。

外旋させる理由として、梨状筋を弛緩させています。この検査で症状が消失する場合、梨状筋の短縮による圧迫が疑われます。

股関節外旋SLR

クラムテスト

SLRテストで陽性となった角度から、検査者は膝関節を痛みが消える角度まで屈曲させます。左右の親指を膝窩の中央に置き、やや強めに押します。

下肢後面の電撃痛が再現されたら陽性とします。別名でボウストリング徴候、膝窩圧迫徴候とも呼ばれます。

クラムテスト

膝窩部には坐骨神経から分岐している内側腓腹皮神経と脛骨神経が通過しているため、それらを圧迫することで坐骨神経を伸張することが可能となります。

坐骨神経|脛骨神経|内側腓腹皮神経

ウエルレッグレイズテスト

健側下肢にてSLRテストを実施していきます。反対側(患側)の下肢後面に電撃痛が再現されたら陽性とします。陽性の場合には、椎間板ヘルニアの可能性が高いです。

発生機序として、健側の下肢を挙上させると、患側の神経根は内下方へと僅かながらに牽引されます。それにより、神経根の圧迫が強まります。

ウエルレッグレイズテスト

ラセーグテスト

座位で実施するSLRと呼ばれるテストで、こちらもSLR同様に坐骨神経(L5-S2)とその硬膜を末梢側に伸張します。下肢後面に電撃痛の出現で陽性です。

痛みを感じると身体を後ろに倒して痛みを和らげる「トライポッドサイン(Tripod sign)が出現します。

ラセーグテスト

坐骨神経以外の伸張法

さらに細かく神経を絞りながら伸張していく方法として、SLRの位置から実施できる以下の伸張法があります。

対象 方法
脛骨神経 SLRの位置から「足関節の背屈+外反+足趾の伸展」
腓腹神経 SLRの位置から「足関節の背屈+内反」
総腓骨神経 SLRの位置から「股関節内旋+足関節の底屈+内反」

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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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