椎間関節障害が前屈でも痛む理由

腰痛の原因で最も多い「椎間関節障害」ですが、基本的には立位後屈(腰椎伸展)で痛むことが特徴です。

しかしながら、患者のなかには前屈での痛みを訴えることもあり、とくに起床時にその傾向が強い場合が多いです。

その理由について、今回は簡単にですが考察していきます。

まずは腰椎伸展で痛みが発生する原因ですが、椎間関節は伸展することで関節がはまり込んでロックされた状態になります。

そのために骨同士が衝突する(圧縮力が高まる)ことで痛みが起きると考えられがちですが、関節部分や軟骨には痛みを感じる神経はありません。

なので、どれだけ椎間関節に強い圧縮力が加わったとしても、膝関節と同じで基本的に痛みが起こることはないわけです。

実際に痛みを感じている組織というのは、椎間関節の周囲に存在する脂肪組織や関節包になります。

それらの組織が正常に椎間関節が動いていないために挟み込まれてしまい、インピンジメント障害として痛みが生じます。

これが一般的な腰痛(椎間関節障害)の発生機序ですが、前屈する場合は椎間関節が開くためにインピンジメントは起こりません。

それではなにが問題かというと、おそらくは椎間関節周囲の癒着に伴う滑走障害が存在しているのではないかと考えています。

椎間関節に炎症が生じているケースでは、寝ている間に周囲組織が癒着してしまい、起きてから動き始めに剥離されることで痛みが起きます。

ある程度に剥がれてしまうと痛みが消失するので、足底腱膜炎と同じでしばらく時間が経つと楽になることが多いです。

このようなケースの治療では、原因のある椎間関節の滑走性を高める腰椎モビライゼーションや腰椎屈曲運動が有効となります。

前屈して腰痛が起きると椎間板症や筋筋膜性腰痛を疑いがちですが、椎間関節障害でも起こることを知っておくことは重要です。

同じ椎間関節障害でも後屈はインピンジメントによる痛み、前屈は滑走障害による痛みであることを考慮したアプローチを行ってみてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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