歩行補助具の選び方と種類について

歩行の専門家でもある理学療法士が、高齢者の歩行補助具(杖や押し車など)を選ぶ基準を解説します。是非とも参考にしてみてください。

一本杖

歩行が不安定になってきたら、まずはこの一本杖(またはT字杖)の使用を検討します。杖を導入する時期というのは非常に難しいのですが、個人的には「片脚立位ができない場合」は使用すべきだと考えています。

また、使用する場合は杖を利用して片脚立位を再度評価し、どれだけの違いが出るかを確認することも大切です。屋内でも屋外でも気軽に使用することができます。

四点杖

私が四点杖の使用を考える際は、膝関節などの痛みがあるかを重視して検討します。実際には、免荷の効果は30%ほどなので一本杖(25%)とさほど変わらないのですが、こちらの方が痛みが軽減する場合が多いです。

また、支持基底面が広がるので歩行時の動揺を軽減する効果も期待できます。デコボコした道では接地面が安定しないので、主に平坦な屋内で使用されます。

ロフストランド杖

別名を前腕固定型杖といい、握りと前腕の2点で支えることができるので、握力が十分にない方に対しても使用できます。

また、一本杖や四点杖よりも免荷の効果が高い(33%)ので、下肢に体重をかけられない方にも適しています。主に、関節リウマチのように手指の変形がみられる方に使用します。

屋内外で使用することができます。

サイドケイン

サイドウォーカーやウォーカーケインなど呼び方が様々ありますが、私はサイドケインと呼ぶようにしています。

他の杖と比べて、手すりに近い感覚で使用できるため、より安定した歩行を行うことができます。ただし、重さが1.5キロ以上ありますので、腕の力が弱い方では使用できない場合があります。

片手で使用できますので、杖で歩くことが難しい片麻痺患者などが対象となります。両手が使える場合は、歩行器のほうが安定する場合が多いです。

松葉杖

最も免荷効果の高い杖(両手使用で67%)で、普通は両手で使用します。こちらも、骨折などで下肢に体重がかけられない場合に使用されます。

使い方が非常に難しいので、高齢者で使用する場面はほとんどありません。屋内外で使用することができます。

歩行器

杖では下肢の痛みが軽減できない場合は、歩行器の検討を行います。下肢にほとんど荷重をかけずに歩くことができるので、痛みが強い間は使用することを推奨します。

松葉杖と比べて使用が簡単なので、高齢者にはとくに使っていただく機会が多いです。ただし、持ち上げて前に出す作業が必要ですので、肩などに痛みがある場合は使用を避ける場合があります。

自宅でも使用できますが、屋外での使用は不向きです。

押し車(シルバーカー)

押し車の使用は、歩行が不安定な場合や体力が乏しい場合、腰が曲がっている場合などに使用を検討します。

免荷の効果はあまりないので、下肢の痛みが強い場合は歩行器を検討します。自宅では使用しづらいですが、屋外や広い屋内では使用できます。

種類によっては、歩いている途中で腰掛けて休むことも可能です。

歩行車

歩行車は押し車と比べて、体重をかけながら歩くことができるため、下肢の筋力が弱っている場合でもスムーズに歩くことができます。

また、歩く感覚をつかむためにも非常に有効な方法だと思います。広い屋内でしか使用できないため、病院や施設などでしか使用する機会はないかと思われます。

おわりに

ここで紹介している歩行補助具は、T字杖以外はすべて介護保険でレンタルすることが可能です。また、介護保険をお持ちでない方は、お近くのホームセンターやアマゾンなどでも購入することが可能です。

医療カタログなどで購入すると高くついてしまうので、なるべく費用を抑えながら購入することをお勧めします。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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