整形外科で働いている理学療法士なら当たり前かもしれませんが、炎症性の関節痛に対してはステロイド注射が劇的な効果を発揮します。
先日も膝関節の痛みが強すぎて跛行がある患者がいましたが、注射をしてから嘘のように痛みがなくなったと喜んでいました。
しかしながら、そこで痛みがなくなったから良かったよかったで終わる話ではなく、なぜ炎症が起きたのか原因を見つける必要があります。
患者からは痛みはもうないのでリハビリはしなくていいみたいな空気が出ていましたが、そこは釘を刺すように説明しました。
「今回は思い当たる理由もなく膝に炎症が起きていますよね。ということは、同じ状態で同じ生活をすると必ずまた痛みが出ますよ」
ステロイド注射は強い消炎剤なので劇的に痛みは落ち着きますが、その効果が切れると痛みは再発することになります。
頻回に打つと軟骨を痛める可能性が高いため、基本的には半年以上の期間をあけてからでないと同じ注射を打つことはできません。
そのことを理解しているなら、注射で痛みが落ち着いているうちに適切な治療や生活指導を行う必要があることがわかるはずです。
その患者の診断名は左膝外側半月板損傷でしたが、左膝関節はX脚になっており、左足関節は重度の背屈制限と甲高をきたしていました。
話を聞いてみると学生時代に平均台から落ちて足首の怪我をしたことがあるとのことで、それから足関節の硬さを自覚しているとのことでした。
おそらくは足関節の可動性低下が膝関節の負担を増やし、結果的に変形性膝関節症や半月板損傷を招いていました。
そういった根本的な原因に対してアプローチをしないことには再発する可能性があり、炎症を繰り返すと変形を進行させる可能性が高いです。
炎症性の関節痛はステロイド注射が著効しますが、あくまでそれは一時的に痛みを軽くしているに過ぎません。
炎症は損傷した組織を治癒するための反応であり、それを薬で強制的に抑えたところで組織が治っていないことには炎症は再発します。
そのことを十分に理解してから、患者に適切な治療を行えるように心がけてみてください。