リハビリテーションの評価でも多用されている片脚立位テスト(開眼・閉眼)についてまとめてみましたので、ご参考にしてください。
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片脚立位の概要
片脚立位テストは、TUGとともに運動器不安定症の指標のひとつとされ、日本整形外科学会より高齢者への実施が推奨されている検査方法です。
簡易的に実施でき、かつ易転倒性との関連性が高いことから、高齢者の身体機能評価で幅広く用いられています。一般的に、片脚立位テストは開眼で実施します。
事前に準備する物
ストップウォッチ、すぐに掴まれるモノがある場所
実施方法の詳細
- 靴または素足で、ある程度の固さがある滑りにくい床に立つ
- 転びそうになったら即座に掴まれるモノがあるそばで実施する(転倒には要注意!)
- 両手を腰に当て、片脚を床から5cmほど挙げてからタイムを計測し始める
- 挙げた足が床に接地するか、立ち足がずれた時点で終了とする
- 左右それぞれ2回ずつ測定し、最もいい記録を選ぶ(最長は60秒)
※上記の実施方法は、日本整形外科学会、日本運動器リハビリテーション学会、日本臨床整形外科学会が協議し、2006年4月に定義・診断基準を公表したものです。
①滑りにくい床に立つ | ②両手を腰にあてる | ③片脚を5㎝以上あげる |
参考タイム(Cut-off値)
PTジャーナルの2009年10月号における「高齢者の運動機能と理学療法」では、片脚立位保持時間は60歳代前半で20歳代の20%、80歳代で5-6%と報告されています。
また、閉眼時は5秒以下、開眼時では20秒以下で有意に転倒リスクが高まることが報告されています。
日本整形外科学会の見解では、開眼時の片脚起立時間が15秒未満の場合、かつ運動機能低下をきたす疾患を罹患しているものは「運動器不安定症」と定義しています。
その他の報告
埼玉医科大学の調査
埼玉医科大学が2007年に高齢者977名を対象に、開眼片脚立位時間を調査した結果は以下になります。
年齢 | 時間 |
65-69歳 | 44秒 |
70-74歳 | 31秒 |
75-79歳 | 21秒 |
80歳代 | 11秒 |
75歳代での転倒群平均は男性で18.4秒、女性で16.8秒。非転倒群平均は男性で23.9秒、女性で24.6秒と有意差を認めています。
運動器不安定症と診断される15秒というカットオフ値は、この調査で考えると75歳代の転倒群に相当する数値でした。
コツコツウォーク2006の調査
コツコツウォーク2006に集まった671名を対象にした調査では、開眼片脚起立時間が15秒未満であった者を年代別にパーセンテージで報告しています。結果は以下になります。
年齢 | 15秒未満 |
10歳代 | 5.2% |
20歳代 | 5.9% |
30歳代 | 10.4% |
40歳代 | 7.6% |
50歳代 | 9.9% |
60歳代 | 12.8% |
70歳代 | 26.8% |
80歳代 | 55.0% |
30歳代では10人に1人が15秒以下であり、運動器不安定症の予備軍と考えられます。加齢の影響が入ってくるのが70歳代からで、80歳代では2人に1人が15秒未満という結果となっています。
一分間の片脚立位は一時間の歩行に相当する?
一分間の片脚立位をとることは、一時間の歩行量に相当するなんて噂を聞いたことがある人は多いと思いますが、これにはやや誤解があります。
詳しく書くと、一分間の開眼片脚立位を1日に3回(左右で計6回)実施すると、股関節に加わる運動負荷量は53.3分の歩行をした場合と同じであるいう意味です。
この運動で約60%に大腿骨の骨密度が改善したと報告されていますが、改善度合いは微々たるものです。なので、片脚立位運動にあまり過剰な期待を持たないほうがいいと思われます。