理学療法士が知っておくべき骨粗鬆症の治療薬

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン(2015年版)は無料でネットに掲載されていますが、これを薬の知識が乏しい理学療法士が読むのは一苦労です。

なので、ここでは簡単に骨粗鬆症の治療薬の種類と服用すべき理由について解説していきます。

骨粗鬆症の薬は3種類

現在使われている薬を大きく分けると、①骨吸収を抑える薬、②骨形成を促す薬、③骨吸収と骨形成のバランスを整える薬の3種類です。

骨吸収を抑える薬は種類が豊富で、ビスホスホネート、SERM(サーム)、抗RANKL抗体、カルシトニンなどが挙げられます。

中でもビスホスホネートの代表的な薬である「リカルボン」は4週間に1回の服薬であり、その手軽さから患者にも人気が高いです。

次に骨形成を促す薬ですが、こちらは種類が限られており、代表的な薬は「フォルテオ」と「テリボン」になります。

この2つの薬は服薬ではなく注射であり、フォルテオは毎日の自己注射、テリボンは医師または看護師に週1回の皮下注射をしてもらう必要があります。

とても効果の高い薬ではありますが、その手間隙や副作用の強さ、値段の高さから患者側から避けられることが多い傾向にあります。

また、フォルテオは2年間、テリボンは104回(約2年間)までしか使用できないといった制約があることも特徴です。

最後に、骨吸収と骨形成のバランスを整える薬ですが、こちらはカルシウム製剤や活性型ビタミンD3製剤があります。

どちらも服薬であり、食事で足りないカルシウムを補ったり、腸からカルシウムが吸収されるのを助ける役割を持っています。

骨粗鬆症の診断手順

どれだけ骨密度が低下したら骨粗鬆症と診断されるのかというと、若年齢を100%としたときに、70%以下になったら骨粗鬆症となります。

この基準はよく知られていますが、他にも診断手順は存在しており、脆弱性骨折を起こし、さらにYAMが80%未満の場合も骨粗鬆症と診断されます。

また、脆弱性骨折(転倒などの普通なら骨折をしないほどの外力で骨折を起こした状態)が大腿骨近位部骨折または椎体骨折であった場合は、骨密度値に関係なく骨粗鬆症と診断することができます。

骨粗鬆症と診断された場合

上記の診断手順で骨粗鬆症と診断された場合は、そこから前述した治療薬をすぐに開始していく必要があります。

理由としては、骨粗鬆症の患者は骨折のリスクが高く、椎体骨折や大腿骨近位部骨折を起こすと生存率が著しく低下することがわかっているからです。

基本的に骨密度は食事や運動で上がることはなく、骨粗鬆症の治療薬を使用する以外に改善は期待できません。

薬を使用する期間についてですが、椎体や大腿骨近位部に脆弱性骨折を起こした患者に関しては、一生服薬し続けることが望ましいとされています。

ただし、脆弱性骨折が存在せずに骨密度だけが低下している場合は、基準値を超えた場合に限ってドラッグホリデー(休薬)を設けることが可能です。

治療薬はどれを選択すべきか

治療薬の選択にはガイドラインを参考にすることが大切で、大腿骨近位部の脆弱性骨折を起こした患者に関しては、表の右側で「A」に位置しているものを選択すべきです。

同様に脆弱性骨折のない骨密度の低下は左側を、椎体の脆弱性骨折を起こした患者は「椎体骨折」と書かれている部分を参考にします。

治療薬を使用する順番について

基本的に「骨吸収を抑える薬」と「骨形成を促す薬」の併用はしませんので、同じA評価の場合にどちらを優先して使用すべきかという問題があります。

この問いに対する回答は、「骨形成を促す薬を先に使用する」です。

理由としては、骨吸収を抑える薬(ビスホスホネート)を中止すると骨密度が急激に一旦下がることが報告されているからです。

そこからフォルテオなどを使用することで骨密度はもちろん上昇しますが、ビスホスホネートを中止する前のレベルに戻るまでに1年ほどを要することがわかっています。

反対に骨形成を促す薬を中止(2年経ったら終了)しても、そこで骨密度が下がることはありません。

そのため、まずは骨形成を促す薬から開始することが理想であり、投与期間を過ぎたらビスホスホネートに切り替えることが効果的です。

骨粗鬆症マネージャーの資格

リハビリ職で取得している人はまだほとんどいないですが、骨粗鬆症マネージャーという日本骨粗鬆症学会が認定する資格があります。

この資格を取得するためには、日本骨粗鬆症学会の会員になり、骨粗鬆症マネージャーレクチャーコースを1回以上受講し、過去3年以内に日本骨粗鬆症学会の学術集会に1回以上参加している必要があります。

それらの要件を満たした状態で、年1回おこなわれる認定試験に合格することで晴れて骨粗鬆症マネージャーとして認定されます。(ただし5年毎に更新手続きが必要)

リハビリ職が取得してもほとんどメリットはないかもしれませんが、骨粗鬆症の知識は整形外科で働くなら絶対に必要なので、是非とも興味を持って勉強してみてください。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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