理学療法士が考える鍼灸治療の取り入れ方

理学療法士の立場から鍼灸療法の考え方について簡単に考察していきます。

鍼灸治療とは

体内の中を巡る気血(きけつ)というエネルギー物質は経絡(けいらく)を通過しながら全身を循環しています。

その経絡上には経穴(いわゆるツボ)といわれる中継点が存在しており、経穴を刺激することで気血の流れが改善するとされています。

刺激する方法として、鍼(はり)を刺す、熱い灸(きゅう)を据える、指圧するといった方法があります。

その中でも、鍼灸を使用した方法を鍼灸治療、指圧を使用した方法をツボ療法と呼びます。

気血や経絡について解説

経絡は血管や神経とは異なり、明確な管があるわけではありません。

また、気血は目に見えないエネルギーであり、具体的な物質ではありません。

そのため、医学的根拠を必要とする西洋医学とは相容れることが難しく、それぞれに独立した体系を築いてきました。

経絡には正経十二経脈といった12本の主要な経脈が存在しており、それらを介して臓腑(内臓)につながっています。

また、経絡上には存在しない奇脈といわれる8本の経脈も存在しています。

WHOからも認められたツボ

全身には2,000カ所以上の経穴があり、全身のあらゆる場所に存在しています。経穴は主に、①筋と筋の間、②筋と骨の間、③関節の膨隆部に集中しています。

経穴の効果に関しては2006年に世界保健機関(WHO)も効果を認めており、2008年にはツボを361カ所にまとめて公表しています。

現在では、WHOが定めた361カ所がツボの基本となっており、主要ツボとして効果が大きいとされています。

主要ツボは正経十二経脈(経絡上)に存在している経穴であり、効果が顕著で反応が明確であることが明言されています。

西洋医学との関連性について

ここまでの内容は西洋医学を勉強してきた療法士にとっては理解しがたい内容だったかもしれませんが、少し西洋医学とからめて考えてみたいと思います。

実際にツボの所在地を確認してみると、我々にも馴染みのあるトリガーポイントと位置が非常に類似していることに気付きます。

トリガーポイントも以前は根拠の薄いものでしたが、昨今は筋膜による連結に準じて痛みが別の部位に波及している可能性が指摘されています。

また、内臓マニピュレーションのチャップマンの反射点との類似性も認められているため、リンパ液や自律神経系への影響も考えられます。

まだ十分に解明されていない分野ではありますが、今後はさらなる医学の発展で解明されていくことは間違いないでしょう。

鍼灸治療は本当に効果があるのか

実際に鍼灸治療を用いた効果について腰痛を例にしてみていきます。

日本の腰痛診療ガイドラインにおいては、鍼灸治療の効果はマッサージやTENS、脊椎マニピュレーションなどと差を認めないとしています。

これらの治療は即時的な効果のみであり、慢性腰痛の改善としては非常に効果の薄い方法と言わざるを得ません。

鍼灸治療のアプローチ方法から考えてみても、その効果は筋緊張の緩和や自律神経の調整が主体であるため、根本的な解決には至らないと考えられます。

療法士として経穴を活用をする

個人的に取り入れていきたい部分として、理学療法アプローチが難しい部分については活用する価値は十分にあるのではないかと思います。

例えば、自律神経失調症や血圧の異常、頭痛や原因不明の痛みといった部分に関してはツボの指圧は効果的な手段と考えます。

他の療法士がアプローチの手段を持たない部分に関して、少しでも考えを持っているというのは有意義なことです。

ツボに関してはセルフマッサージにて簡単に行うことができますので、いくつか覚えておいて指導することで重宝する部分も多いはずです。

ツボの指圧方法

ツボを刺激する基本的な方法としては、主に親指を使用して皮膚を垂直に圧迫していきます。

呼気に合わせてゆっくりと3秒ほど圧迫し、吸気に合わせてゆっくりと圧迫を緩めます。この作業を合計で2分ほど繰り返します。

痛みはあってもよいですが、痛いけど気持ちがいいほどの範囲で実施することがポイントです。

頻度の規定はありませんので、暇な時間に実施すると良いです。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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