痛みに波がある患者さんは非常に多いですが、それは痛みを引き起こしている主な原因が筋筋膜にあるからといえます。
例えば、腰痛が主訴の患者では腰椎椎間板症の診断名が付きやすいですが、椎間板の状態が日によって変動するとは考えられません。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症も同様であり、下肢のしびれの状態が頻繁に変化するようなら別の問題を考慮すべきです。
それでは、筋筋膜は日によって状態がコロコロと変わるのかという疑問が出てきますが、私の経験上だとかなり変わります。
なぜそれほどまでに変化するのかはわかりませんが、あまり癒着が進んでいない症例ではその傾向が強いように感じます。
また、筋膜はストレスの影響を受けやすいともいわれており、それも痛みが変動しやすい理由のひとつだと考えられます。
ストレス以外にも怪我やオーバーワークが関与していることが多く、癒着が強い症例では圧痛点が多岐にわたっています。
そのような重症患者では線維筋痛症という診断名が付いていることもあるので、しっかりと硬結しているポイントをとらえることが必要です。
基本的に硬結部位をほぐすと炎症(もみ返し)が出現して痛みを伴いますので、最初から強めのアプローチをするとリハビリ拒否となることも少なくありません。
そのため、重症度に応じながら軽めの負荷から開始するようにし、1箇所ずつポイントを潰していくことが大切です。
では実際にどれだけ治せるかですが、私のように手技の講習を正式に受けていないレベルでは、効果を出せるのはせいぜい2〜3割ぐらいでしょうか。
日本の筋膜治療の第一人者である竹井仁先生なら的確にツボ(硬結部)をほぐせるかもしれませんが、素人だとその精度はかなり落ちます。
筋筋膜性疼痛は単純X線などの画像検査にも写らず、器質的な問題が見えないため、医者から認知されない場合も多いです。
そのため、そこを見落とされるせいで手足のしびれの原因が頚椎や腰椎のせいにされやすく、意味のない手術を受けていることも少なくありません。
西洋医学で原因がわからないときに東洋医学を受ける患者は多いですが、東洋医学には経絡(ツボ)の概念があるのでこれは理に叶っています。
経絡と筋膜の運動配列は非常に類似しており、西洋医学では相手にされてこなかった筋膜性疼痛の問題にアプローチできる手段を持っています。
そのため、筋筋膜の問題は鍼などが効果を発揮しやすく、上手な鍼灸師の治療を受けることで寛解することも多いように感じます。
ただし、中国四千年の歴史ですべて解決できるようになったかというとそうではなく、症状を完治させるレベルには至っていません。
このことからも筋膜性疼痛を徒手のみで綺麗に治せるとは考えにくく、一時的に緊張を緩める手段ではないかと考えています。
もちろん強く硬結しているポイントを取り除くことで再発しにくくなりますし、痛みの波を緩やかにしていくことは可能です。
もしも患者で痛みは日によって違うと訴えるようなら、筋筋膜の問題を疑ってから評価をしていくようにしてみてください。