短時間型通所リハビリテーションの実地指導について

整形外科クリニックで外来リハビリと短時間型通所リハビリを兼務している管理人ですが、開設して2年で初回の実地指導がありました。

その際に指摘された点などを記録として残すため、ここで簡単に記載していきたいと思います。

通所リハビリの形態

当院の通所リハビリでは、①短時間型(1時間以上2時間未満)、②送迎なし(送迎減算)、③リハマネ加算Ⅰを算定しています。

予防通所リハビリでは、利用料と運動器機能向上加算のみの算定です。

通所リハビリを提供しているのは、月・木・金の14:30〜15:30(1時間)のみで、提供時間中は専従として入ることになっています。

それ以外の時間(8時間勤務なら残りの7時間)はすべて外来リハビリに従事しており、簡単に書くと通所と外来を兼務している形になります。

通所利用者のリハビリ内容としては、個別リハビリと物理療法が主であり、実施している内容は外来リハビリとほぼ同じです。

短時間型通所リハビリの問題点

まずはなぜ短時間型デイケアを開設したのかを簡単に書かせてもらうと、そこには要介護被保険者等の維持期リハビリの廃止があります。

例えば、運動器リハを実施している要支援1の方がいたとしたら、その方は治っても治らなくても150日でリハビリは終了しなればなりません。

完治して状態を維持できるなら問題はありませんが、介護認定を受けている方の多くは今後の機能低下が危惧されることや、150日以降も継続したリハビリの希望があるのが現状です。

このような人たちの受け皿として短時間型デイケアを開設したわけですが、実地指導ではこのコンセプト自体が否定的な感じで指摘を受けました。

提供している内容は外来リハビリとほぼ同様であり、医療と介護の棲み分けがなされていないことが問題といわれました。

このあたりは考え方次第な部分もありますので責められこそしましたが、指導にまで至ることにはなりませんでした。

ちなみですが、実地指導で違反(書類の間違い等)が見つかり、指導を受けるときに最も軽いのが口頭指導になります。

口頭指導は是正改善報告書の提出が必要ないため、ここのラインまでなら十分に合格点といえるかもしれません。

それよりも重いのが文書指摘であり、こちらは明らかな違反(基準を満たしていない)が見つかり、是正改善報告書の提出が必要となります。

実地指導と混合されやすいものに「監査」がありますが、こちらは実地指導中に著しい違反が見つかった場合などで、さらに詳しく調べられることになるので最も大変な状態といえます。

実地指導でチェックされるポイント

最初に聞かれたことは、通所リハビリを開始するまでの流れについてで、口頭で具体的に説明することを求められました。

その後は通所リハビリテーション計画書を中心にチェックされていきましたが、居宅サービス計画書との整合性などがみられました。

実地指導は県の監査指導課職員が来ましたが、その方は厚労省が参考様式として掲示した現在の計画書(非常に複雑な書類)に否定的でした。

このあたりは各県や職員毎で考え方は異なるかもしれませんが、もっと簡易的でチェック様式ではない形式を薦められました。

初回はサービス提供開始からおおむね2週間以内にリハビリ計画の見直しが必要ですが、暫定プランを本プランにしても差し支えはないとのことでした。

当院では、基本的に外来リハビリで150日を超えた患者を中心に誘導しているので、すでに状態を把握しているという意味では暫定プランが本プランとして全く問題ありませんでした。

今回の実地指導で何度も言われた用語のひとつに「SPDCAサイクル」がありますが、リハマネ加算を算定するうえでの留意事項として、以下のように書かれています。

リハビリテーションマネジメントは、SPDCAサイクルの構築を通じて、リハビリテーションの質の管理を行うものであること。各事業所における多職種協働の体制等が異なることを鑑み、リハビリテーションマネジメントの加算の種類を選択すること。

SPDCAとは、以下の頭文字から成り立っています。

  • S(Survey):調査
  • P(Plan):計画
  • D(Do):実行
  • C(Check):評価
  • A(Act):改善(計画と実行を埋める処置)

これを通所リハビリに当てはめると、まずは利用者の全体像を調査(評価)し、ニーズを考慮したうえで短期目標と長期目標を定めます。

目標を達成するために必要なリハビリメニュー(Plan①②③など)を設定し、それがどれだけ実行できたかをカルテなどに記載します。

3ヶ月後(リハビリ計画書の見直し時期)に目標を達成できたかを評価(判定)し、未達成の場合は改善するための方法を考察していきます。

ここまでを一連の流れとして、また調査から開始してSPDCAをグルグルと回していくことが必要となるわけです。

基本的に通所リハビリは卒業ありき(延々と続けるものではない)なので、最終目標としては他サービスに移行するか、サービス利用なしでも状態を維持できる生活レベルを目指していきます。

もしも計画書の見直し時期にまだ通所リハビリを継続していく必要がある場合は、特記事項に医師のコメントなどを入れておくようにします。

指導された点

今回の実地指導で口頭指導を受けた点としては、以下が挙げられます。

  • 契約書などは本人だけでなく、家族からも同様に署名をいただく
  • 苦情や相談の窓口には通所リハビリの番号だけでなく、市の長寿社会課や国保連などの番号も記載する
  • 重要事項説明書に「第三者による評価の有無」についての記載をする
  • 研修会や勉強会は、介護事業所で問題となりやすい虐待や拘束などをテーマにしたものが望ましい
  • 担当医との意見交換などは口頭のみでなく文章として残す etc.

前述したSPDCAサイクルの話に加えて、上記の指摘を受けましたので、これらに関しては早急に対応することにしました。

契約書の署名はご家族からいただくことが難しいケース(お近くに住んでいない場合など)も多いため、その際は署名がもらえない理由を書き込むように対処することになりました。

おわりに

実地指導を受けるのは今回が初めてでしたが、どうにか口頭指導のみで乗り越えられたので一安心できたというのが本音です。

次回は3年後(または6年後)らしいので、その際は口頭指導もなく、アドバイスのみになれるように頑張りたいと思います。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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